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俺様勇者と武闘家日記
第2部
スー
唐突な別れ
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模様だ。
「ユウリ、上!! 」
 空を見上げると、煙で覆われていたはずの太陽はすでになく、代わりに煌々と照らし出された月が顔を出していた。
 と同時に、天井がなく剥き出しだった牢屋が、四方を圧迫感のあるレンガに囲まれた狭い部屋と変わっていく。それは夜のテドンで見た牢屋の外観によく似ていた。
 そしていつのまにか鉄格子の向こう側にあった骸骨は消え、代わりにそこには一人の人間が立っていた。
「……ようやく、私の声を聴いてくれる人間が現れたか」
 目の前の人物に、私たちは目を見張る。今までこの町に私たちに話しかけてくる人間はいなかったはずなのに、この人は明らかに私たちを認識している。しかし普通の人間と明らかに違うのは、彼の体がうっすらと透き通っており、僅かに光り輝いていることだ。
「ゆ、ユウリ、もしかしてこの人って……」
「ああ。間違いなくイグノーだ」
 あああああ、やっぱり!
 この人がイグノーさんということは、つまり生きている人間ではないってことで……。
「はうっ」
 幽霊と判断した瞬間、私の恐怖は限界に達した。
「おい! 呑気に気絶してる場合か!」
 倒れる寸前ユウリに呼び戻され、なんとか意識を取り戻す。
 そんな私たちのやりとりを、イグノーさんは心配そうに眺めていた。
《お嬢さんは、幽霊を見るのは初めてか?》
「あ、いえ……。単にそういう類が苦手なだけでして……」
 くらくらしながらも、私は鉄格子に手を掛けてなんとか身体を支える。
「幽霊に気遣われるとか、情けないにもほどがあるだろ」
 至極まっとうなことを言われ、ぐうの音も出ない私。
 その人物をまじまじと見てみる。くすんだ金髪に空色の瞳。優しそうな印象の中年男性だ。一見しただけでわかる、位の高そうな神官の衣服を身にまとっているのは、彼が三賢者の一人だからだろう。先ほど傍らに置いてあった杖をついて立っているイグノーさんは、私たち……いや、ユウリの方に視線を向けた。
《自己紹介が遅れた、私の名はイグノー。こうして魂の姿となって話すのは、君たちが初めてだ》
「俺はユウリ。魔王を倒すためにオーブを探している。あんたは、俺たちがここにやってくるのを知っていたのか?」
 ユウリがそう言うと、イグノーさんは首を横に振った。
《いや、私に未来を予知する力はない。この町が襲われる直前、銀髪の女性からの伝言を聞いただけだ。『黒髪の青年があなたのもとを訪れたら、あなたが大事にしていたものを預けなさい』と》
「それって……、カリーナさんの言っていた新婚夫婦!?」
《!! 君は、カリーナのことを知っているのか?》
「あ、いや、その……」
 しまった! むやみに彼女の名前を出すべきではなかった!?
「ああ。つい最近、彼女の家で世話になった」
 ところが、ユウリはあっさり
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