第2部
スー
唐突な別れ
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ではないか。
「大丈夫です。心配してくださって、ありがとうございます」
私は笑顔で答えると、ユウリに置いてかれないよう急ぎ足で彼のあとを追ったのだった。
二度目に訪れたテドンの町は、とても町だったと言えるような景色ではなく、風化された瓦礫と無数の骸骨があちこちに転がる、まるで地獄のような様相だった。
空を仰げば今にも泣きそうな曇り空。まるで魔王軍によって滅ぼされた町の人たちの悲しみが反映されているかのようだった。
「一応、あれを使ってみるか」
そう言うと、ユウリは鞄からこの前手に入れたばかりの『山彦の笛』を取り出した。三賢者の一人エド(今は馬に姿を変えられている)が作ったアイテムで、吹くと不死鳥ラーミアを目覚めさせることが出来るオーブが近くにあるかどうかを教えてくれるらしい。
早速山彦の笛を吹いてみると、どこからか同じ音色がこだました。これこそが、山彦の笛と呼ばれる所以なのだろう。
「ここにオーブがあるのは間違いないな」
オーブがここにあると確信したところで、私とユウリは、足早に例の牢屋のところへと向かった。
何度見ても慣れることのない、町の中でも極めて凄惨な場所。目の前にある鉄格子の向こう側には、一体の骸骨が横たわっている。魔王軍が何を思ってここまで徹底的に攻撃したのか、今となっては分かりたくもない。
よく見ると、白骨遺体には立派なローブが着せられており、傍らには人の背丈ほどもある立派な杖が転がっていた。
早速ユウリは、魔法の鍵でも開かなかった鉄格子の扉の前に立ち、最後の鍵を手にした。鍵穴に鍵を差したとたん、鍵の先端が小さく光り、次の瞬間形状がみるみる変わる。
鍵を回すとともに、小気味良い音が鳴った。ここに来るまであんなに苦労した割に、開錠するときは拍子抜けするくらいあっさりしている。
ボロボロの鉄格子の扉を開けたユウリは、ためらうことなく中に入る。
「テドンの罪人……。ランプの預言だとオーブを手に入れるには、罪人を解放しろと書いてあったが……」
ユウリは預言が書いてあったランプを鞄から出した。カリーナさんと話し合い、結局このランプは私たちがもらうことになったのだ。
「他に何か書いてないのかな?」
鉄格子越しに私がそう言うと(骸骨がこわいのでこれ以上近寄れない)、ユウリはランプをいろんな方に向けて眺め回した。すると、何かに触れたのか、突然ランプの口から黒い煙のようなものが吹き出してきたではないか。
「なんだ!?」
驚くユウリの顔が黒い煙によってみるみるうちに隠れていく。煙は牢屋全体まで行き渡り、さらに外まで広がっていた。
「なっ、なにこれ!?」
黒い煙は空に向かって垂直に高く昇っていき、やがてそれは黒い雲となって空一面を覆い始めた。 いや、黒い雲というより、明らかに夜の空
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