第二章
[8]前話
だが皆助かりよしとした、腹の中の子のことも不思議でならなかったが洪水の後の邑の家や畑を戻すことで忙しくだ。
また子は授かると話してだった。
忘れることにした、だが。
桑の木には実が実るでその実を取りに来た邑の者達が言って来た。
「桑の木の下に赤子がいたぞ」
「男の赤子だ」
「産まれたばかりだぞ」
「泣いているぞ」
「?そういえば」
その話を聞いてだ、夫は言った。
「若し腹の中にいたままならだ」
「そうね、生まれているわね」
妻も頷いて応えた。
「子供が」
「そんな頃だな」
「そうね」
「それならだ」
夫は妻に怪訝な顔で話した。
「その赤子は」
「私達の子供かしら」
「そうかもな、子供はだ」
「私が振り向いたからなのね」
「洪水の時にな」
まさにその時というのだ。
「だからだ」
「それでなのね」
「子供はそのまま産まれずにな」
「一旦私のお腹から出て」
「そしてだ」
そのうえでというのだ。
「桑の木になってな」
「それで産まれる時になって」
「出たのかもな、それならな」
夫は妻に話した。
「その赤子を家に入れよう」
「私達の子供だから」
「そうして育てよう」
こう言ってだった。
二人で桑の木のところに行ってその赤子を拾ってだった。
家に入れた、その夜に。
「子供を育てると凄いことになるとね」
「夢で神女様に言われたか」
「そう、そしてね」
そのうえでというのだ。
「民を救う人になるともね」
「それは凄いな」
「だからね」
「この子は大事に育てるべきか」
「そうみたいよ」
「わかった、産まれた時も不思議だが」
夫は首を傾げさせながら言った。
「それでもな」
「それだけではないみたいね」
「洪水が起こってな」
「それでいなくなって桑の木になって」
「産まれたんだからな」
「どんなことをするか」
「ああ、育てて見ていくか」
「そうしましょう」
夫婦で話してだった。
そのうえで赤子を育てた、この赤子がである。
後に商の湯王の軍師となりその建国を助けた伊尹である、彼の出生にはこうした話があった。洪水と桑が稀代の名軍師の出生にまつわっているとは実に面白いことであると言えるだろうか。
桑と洪水 完
2022・5・14
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