第一章
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海賊と酒神
酒と葡萄の神ディオニュソスはこの時船の中にいた、中性的で優雅な外見で服もいい彼を海賊達は王侯貴族かその子弟と思い捕まえたのだ。
「これは身代金をがっぽり取れるな」
「そうだな」
「こんな立派な身なりの若様だ」
「きっと凄い国の王様か貴族の若旦那様だ」
「それか跡継ぎ様だ」
「身代金を要求すればどれだけ貰えるか」
「これは楽しみだな」
海賊達は岬のほとりにいて攫った彼を見つつ笑っていた、彼の動じない態度を見ても間違いないと思っていた。
それで身代金の話をしてだった。
とりあえず彼を縛っておこうとしたが。
「あれっ、どうしても解けるぞ」
「縛れないぞ」
「これはどういうことだ」
「何でこうなるんだ」
「おかしいぞ」
「僕は縄では縛れないよ」
ディオニュソスは驚く海賊達に笑顔で話した。
「残念だけれどね」
「じゃあ何で縛れるんだ」
「縄で駄目なら」
「何でなんだ」
「若しかして」
ここで海賊の船の舵取りがふと気付いた、それで仲間達に話した。
「この若様人間じゃないんじゃないか」
「人間じゃない?」
「何処かの国の王様か貴族の家の人だと思っていたが」
「凄い気品と優雅さだからな」
「身なりもいいし」
「それが人間じゃないのか」
「神様じゃないのか」
舵取りは仲間達に言った。
「縄がかからないなんてな」
「そうだな」
海賊達の中で特に身体の大きな男、海賊の頭は舵取りの言葉に頷いた。
「これは上玉と思って捕まえたがな」
「それで身代金をですね」
「貰ってこの若様は国に返す」
「そうしようと思っていましたが」
「どうしても縄が自然にほどける」
そして縛れないというのだ。
「それを見るとな」
「どう見ても人間じゃないですね」
「ああ、だからな」
それでというのだ。
「ここはな」
「余計に粗末に出来ないですね」
「元々殺すつもりもなかったがな」
「やっぱり海賊と言っても殺しはいけませんね」
「それは最後の最後だ」
頭は舵取りに言った。
「いつも言ってるな、そんな酷いことはするな」
「はい、幾ら海賊でもですね」
「ものを頂戴したり身代金を貰う位でな」
悪事はしてもというのだ。
「殺すなんてことはだ」
「しないことですね」
「そんなことをしてみろ、死んで冥界に行った時にだ」
頭は険しい顔で述べた。
「ハデス様の裁きを受けてだ」
「へい、タルタロスに送られます」
「あの怖い場所に」
「そうなってしまいます」
「そうなったら今はよくても」
「こんな悪いことはありません」
「だから出来る限りするなって言ってるだろ、海賊でもだ」
例えそうであってもとだ、頭は舵取り以外の者達にも話し
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