勇者と少女
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浮かべて国の指導者は言う。誤爆だった。でもこれも戦争を早く終わらせるための、必要な犠牲なんだ。世界平和のためだ。そして数万人が死んだ。
素手で武器に対抗するには、相手と同じだけ強い武器を持たなければいけない。先んじたのはアメリカだった。次にロシア、中国と続いた。一国がルールに穴を開けてしまえば、あとは簡単だった。蟻が開けたちいさなちいさな穴でも徐々に大きくなり、最後には堤防を決壊させてしまうように、モラルの全ては弾けるように破裂した。国は人道という仮面を被ることをやめた。やらなければ、やられるのだ。戦場は無法地帯となった。雨の代わりに爆弾をばらまき、町は徹底的に壊滅させられた。難民が溢れた。
気がついた時には、もう手遅れだった。
多かれ少なかれ、地球上で放射能に汚染されていないところなどなくなった。滅ぼしたはずの細菌は人の手によって蘇った。より殺傷力の強いものをと求めた結果だった。医学も進歩していたが、人の数は確実に減った。平均寿命は見る間に縮まった。より安全な場所を求め、地上より地下で暮らす人が増えた。放置された病院、研究所、原子力発電所、それらすべてに国の管理が行き届くわけがなかった。
今、人の心には、常に絶望感がつきまとっている。メディアは連日地球滅亡説をとりあげ騒ぎ立て人心を煽る。まるで、かつて黒死病が大流行した時のように、死は人の間を踊り狂った。いかにして生きるかより、死をみつめ、死を恐れない思想が持て囃された。
放射能つながりで、チェルノブイリとフクシマに関することも、よく耳にした。この少女が、俺を見て最初にメディア関連かと思ったのも、そういう経緯なのだろう。
「はやくでていったほうがいいよ」
優しい少女は急かす。
「大丈夫。ここの線量は、それほどでもないよ。チェルノブイリの事故は、もう大分前の話だから」
俺は微笑んだ。嘘だった。年月を経て、消えるものもあれば、蓄積するものも、ある。しかし俺はここを今出て行くわけにはいかなかった。
女の子は、ぱっと明るい顔になった。
「うん。パーパも言うの。ここは全く危険なところじゃないって。溜まり水を飲まないとか、歩いて行っちゃいけないところにいかないとか、少しのことに気をつければ、何にも怖くないもん。魚だって、茸だって食べるよ」
俺は曖昧に笑った。少女の美しい心を汚したくなかったから。
「ひとを探しているんだ」
俺は言った。女の子は首を傾げた。
「取材の人?じゃなかったら、ここには誰も来ないよ」
俺が探す人間は、一目見たら忘れられない容姿を持っている。女の子
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