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銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第二十六話 待ち受ける者
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を浮かべて俺を迎える。このあたりはヴァレンシュタインといった頃から少しも変わらない、嬉しい男だ。どうやらあまり他人には聞かれたくない話らしい、応接室へと誘われた。

公が白のマントを気にしながら席に着く。サッシュは淡いブルーだ。以前着けていたピンクのサッシュは皇帝にカワイイと言われてから止めたらしい。まあブルーも色が淡いから全体的に柔らかい雰囲気になっている。元々外見では鋭さなど感じさせない男だ、似合っているだろう。

「さて、小官を此処へ呼んだわけは? しかも至急と窺いましたが」
俺の問いかけに公は一つ頷いた。
「イゼルローン要塞に行って欲しいのですよ。装甲擲弾兵第二十一師団と共に」
「イゼルローン要塞……」
また公が頷いた。

ドアをノックする音と“失礼します”という声が聞こえヴァレリーが部屋の中に入ってきた。飲み物を持ってきた様だ。公にココアを俺にはコーヒーを置くと部屋を出て行った。俺も公もその間は無言だ。……イゼルローン要塞か……、どういう事なのか……。

コーヒーを一口飲む。美味いな、良い豆を使っているらしい。残念なのは香りだ、公がココアを飲んでいる所為でコーヒーの香りが今ひとつよく分からない、惜しい事だ。公は美味しそうにココアを飲んでいる。帝国屈指の実力者には見えんな……。さて、コーヒーを楽しんでいても仕方ない、話を続けるか……。

「行くのは構いませんが何をお考えなのか、教えて欲しいですな」
イゼルローン要塞への配備。悪い話では無い。妙な戦場に送って磨り潰そうというわけではないのだ。能力、信用、そのどちらかが欠けてもイゼルローン要塞配備は有りえない。

しかし公は俺がローゼンリッターと不必要に関わり合うのを怖れても居た。最前線ともなれば出会う可能性は大きい。公は冷徹ではあっても冷酷では無い。行けと言うからには何らかの狙いが有るはずだ。単純に要塞を守れという事ではないだろう。一体俺に何を期待するのか……。

「今度、イゼルローン方面軍が新しく編成されます」
「そのようですな。噂ではありますが聞いております」
「方面軍司令官にグライフス大将、副司令官にはメルカッツ大将が就きます。そしてグライフス大将は要塞司令官を、メルカッツ大将は駐留艦隊司令官を兼任する……」

なるほど、グライフス大将はどちらかと言えば参謀としての職務が長いと聞いている。一方のメルカッツ大将は実戦指揮官としては名のある人物だ。そして二人とも我の強い人物とは聞いていない。この二人なら協力できるだろうと見ているわけか。

「しかし困った事は方面軍司令部の下にイゼルローン要塞司令部、駐留艦隊司令部が来るわけですが、この両者、仲が非常に悪い」
公が苦笑している、俺も釣られて苦笑した。最前線に同格の司令部が二つ存在する。どちらが主導権を握
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