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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第73話 派閥と家族
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にもよってね。グリーンヒル少将には例の件で借りがあるから、面倒なことになる……そうそう、そのグリーンヒル少将だが来月には中将になる。第四艦隊司令官だ」
「叔父さんも、ですか?」
「察しがいいが、残念ながら私のほうは昇進なしだ。第四七高速機動集団司令に内定した」
「……」

 グレゴリー叔父が話しておこうと言って、転出の話をするということは別の意味もある。出世階段を順調に上っている叔父が、功績を立てられる前線の実働部隊指揮官になるということは、戦死する可能性もあるということだ。素直に「おめでとうございます」と俺が言えなかった引っ掛かりはそれだった。

 グレゴリー叔父が第一二艦隊司令官になるのはいつ頃か、原作にも書いてないので分からない。ヴァンフリート星域会戦が七九四年三月だったような気がするから、それまでには昇進しているだろう。俺がいることで歴史がどう変わっているかはわからないし、何も変わっていないのかもしれない。というかここだけは変わらないでいてほしい。

 もし原作とは違って帝国領大侵攻前にグレゴリー叔父が戦死するようなことがあったらどうするか。そしてもののついでに俺まで戦死すればどうなるか。ボロディン家のY遺伝子の存続などどうでもいい話だが、レーナ叔母さんやアントニナ達の生活は? 一応俺の遺族年金はボロディン家に入ることになっているから、レーナ叔母さんが弁護士資格を再取得すれば女性四人、何とか食べていけるかもしれないが……

「まだエル=ファシル攻略戦の論功行賞は出てませんから、しばらく『アレクお爺さん』のところで修行することになりそうです。私は大丈夫ですよ、叔父さん」
「……そのあたりをアントニナも分かってくれるといいんだがなぁ」

 アレクお爺さんはないだろうと、苦笑しつつグレゴリー叔父がグラスを傾ける。アントニナは女性なので仮に選抜徴兵に引っ掛かったとしても基本的には実働部隊に配属されることはない。しかし士官となれば話は変わってくる。情報分析科卒の全ての士官が前線に出るわけではないが、法的に何ら制限があるわけではない。当然戦死のリスクはある。

「ヴィクトール」
「なんです。叔父さん」
「軍の人事は来月大きく変わるが、二・三年後にはもっと大きく変わっているだろう」
「長官職だけでなく本部長職も、ですか?」
「そうだ。シドニー=シトレとラザール=ロボス。向き不向きからいえばシトレ中将が本部長で、ロボス中将が長官となるだろう。いずれな」

 軍上層部の引退によって派閥争いはそれまでよりさらに深刻性を増す。誰がどう見てもシトレ派と言わざるを得ないボロディン家は、巻き込まれる云々以前の問題だ。幸い現時点では軍官僚・軍政分野に根を伸ばしつつある『国防委員長』派も含めて軍内部は三すくみであって、どこかが突出している
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