第二章
[8]前話
「冷たいお茶ね」
「そうですか」
「君もどう?」
「自分で出しますよ」
「そうなのね」
こうしたやり取りをしてだった。
季衣は膝までのタイトスカートが印象的な小柄故に着ているというより着られているという感じのダークグレーのスーツ姿でだ。
立ち上がって自分で冷たい麦茶を冷蔵庫から出してだ。
飲んで涼しくなって調子を取り戻した、見れば大関も飲んでいた。
兎角だ、季衣は力仕事が苦手で暑さ寒さに弱い、しかも。
居酒屋では酒を一口でも飲むと酔い潰れるのでいつも烏龍茶かオレンジジュースだった、それで一緒に飲みに行ってだ。
大関はジョッキのビールをごくごくと美味そうに飲んでから言った。肴には烏賊の姿焼きや冷奴がある。
「先輩いえ主任は昔からお酒にも弱いですね」
「暑さ寒さにもっていうのね」
「はい、力仕事もで」
「仕方ないでしょ、非力でね」
「そうした体質ですね」
「そうよ、仕方ないでしょ」
「よくお仕事出来るって言われていて」
大関は冷奴を食べている季衣に言った。
「事務とか企画はそうなのに」
「昔からよ、得意なものはね」
「とことん得意ですね」
「けれど苦手だと」
「全然なんですね」
「運動特に力仕事は駄目で」
自分から言った。
「それでね」
「暑さ寒さに弱くて」
「お酒もよ」
「そうなんですね」
「そう、ただ食べものの好き嫌いはないから」
このことは大丈夫だというのだ。
「ここのお店のもね」
「食べますね」
「そうよ、誰でも苦手なもの駄目なものはあるのよ」
「人間ならですね」
「そうよ、だから力仕事はね」
どうしても出来ないそれはというと。
「お願いね」
「はい、これからも」
「頼りにしてるから」
こう言って烏龍茶を飲んだ、あくまで酒は飲もうとしない、だが。
翌日季衣は会社の重要な仕事を成功させて流石と賞賛された、しかし力仕事は相変わらず大関頼みで一切出来なかった。このことは彼と結婚してからも同じであった。
実は苦手だらけ 完
2022・7・24
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