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実は苦手だらけ
第一章

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                実は苦手だらけ
 三森季衣は有名大学を優秀な成績で卒業したうえで八条証券に就職した、仕事は出来ることで知られており。
 二十代で主任となり将来を期待されている、背は一五〇程で大きな垂れ目が印象的な童顔で癖のある黒麻実を短くしていてだった。胸は大きくアニメ声だ。性格も陽気で公平で社内でも社外でも評判である。
 プライベートではよく同僚達を自宅に招いて料理を振舞っているがこちらも評判がいい、それで完全無欠とさえ言われている。
 だが一人だけそうは思っていない者がいた、彼女の同じ大学の二つ下の後輩で今は直属の部下である大関敏郎である、背は一七七あり筋肉質で小さな丸い目と長方形の顔を持っている。実は額が広いが黒髪で隠している。
 その彼にだ、季衣はよく言っていた。
「大関君、悪いけれどね」
「何ですか?」
「課長さんに依頼された荷物取ってきて」
「それをですか」
「ええ、お願い出来る?」
「わかりました」 
 大関は季衣の言葉に素直に頷いてだった。
 その荷物を取ってきた、そのうえでだ。
 季衣の前に置くとだ、彼女は言った。
「有り難う、重いわよね」
「五キロ位でした」
「五キロもあるのね」
「たった五キロですよ」
「五キロなんて持てないわよ」
 とてもとだ、季衣は大関に困った顔で答えた。
「そんなのは」
「いや、それ位は」
「私は違うのよ」
 バツの悪い顔で言うのだった、そしてだった。
 高い場所にあるものや重いものはだ、季衣はいつも大関に持ってもらった。そして少しでも暑かったり寒かったりするとだ。
 調子が落ちた、それで大関に言うのだった。
「今日暑いわね」
「またそう言います?」
「暑いものは暑いから」
 だからだというのだ。
「辛いわ」
「先輩いえ主任昔からですね」
「ちょっと暑かったり寒かったりするとね」
「調子落ちますね」
「今からお茶出すから」
「僕が出しますよ」
「自分のものは出すわよ」
 自分でというのだ。
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