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地団駄踏んでももう遅い
第二章

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 ある客が来店してだ、店の者達がぢょっと騒いだ。
「また随分大きな人が来たわね」
「百九十あるわよ」
「それもやけに逞しくて」
「まるでボディービルダーね」
「ラガーマンかアメフト選手?」
「そうかしら」
「何かあのお客さん昔です」
 知佳もその客を見た、そしてその大きさと逞しさに驚きつつ話した。
「お会いしたことがある様な」
「知佳ちゃんの知り合い?」
「そうなの?」
「ひょっとして」
「そうかも知れないです、ただ」
 それでもとだ、知佳は言った。
「誰なのか」
「わからないのね」
「そうなのね」
「はい、ですがお客さんなので」 
 知佳は他の店員達にあらためて話した。
「注文受けてきます」
「宜しくね」
「そうしてね」
「はい、行ってきます」 
 他の店員達にこう応えてだった。
 知佳はその客から注文を受けに行った、黒い着物風の上着と和風のズボンの上に白い割烹着という格好だ。頭の帽子は黒だ。実は長身で逞しい男性がタイプなので一目見て注文を受けに行きたくなっていた。だがそれは言わないで店員として行った。
 その客の席に来るとだ、長方形の顔で黒髪を短く刈った小さい目の彼は知佳を一目見て言ってきた。
「前田さん?」
「はい、そうですが」
 知佳は自分の名前を言われて驚いた、だが。
 制服の左胸の名札を見てだ、こう言ったのだった。
「名札見てですか?」
「いや、覚えてない?」
 客はさらに言ってきた。
「僕斎藤だけれど」
「えっ、斎藤さんて」
「だから同じクラスだった」
 客は微笑んで話した。
「斎藤公康だよ」
「斎藤君!?嘘」
「嘘じゃないよ、大学入ってね」
「八条大の法学部よね」
「それから大学の近くのスポーツジムでアルバイトはじめてジムでトレーニングをはじめたら」
 その様にすればというのだ。
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