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母が付き合っている人を
第一章

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               母が付き合っている人を
 能登祐樹大学を出て就職したばかりの彼は兄の修と姉の妙からその話を聞かされてまずは意外といった顔になって言った。
「へえ、お袋がか」
「ああ、今日な」
「私達にそうお話したのよ」
 兄も姉も言った、二人共就職している。三人はそれぞれ黒髪で垂れ目で面長で下唇が少し暑い。目は小さく背は高い。修は真ん中で分けていて妙はロングヘアだ。祐樹はショートである。
「お付き合いしている人がいてね」
「今度紹介するって」
「ちょっとお袋に聞いていい?」
 今は風呂に入っている彼女にとだ、祐樹は言った。
「本人に」
「ああ、そうしろ」
「あんたもね」
「親父が死んでもう一年で」
 祐樹は今度はこう言った。
「落ち着いてきたけれど」
「ああ、それでな」
「この前からお付き合いしてるらしいの」
「親父が亡くなった後暫くしてボランティアで知り合って」
「それでね」
「そうか、まあ兎に角な」 
 兄と姉から詳しい話を聞いてまた言った。
「お袋にな」
「話を聞くな」
「お母さんから直接ね」
「そうするな」
 こう言ってだった。
 祐樹は夕食を食べてだった。
 それから風呂から上がった母の須美に話を聞いた、すると兄と姉の言う通りで。
 自分達の顔を皺だらけにさせて白髪を短くしている彼女にだ、こうも言われた。
「それでその人を今度ね」
「紹介してくれるんだな」
「ええ、駄目かしら」
「親父も亡くなったし」
 それでとだ、祐樹は答えた。そこには修と妙もいる。
「だったらな」
「いいのね」
「いや、付き合うのはな」 
 これはというと。
「その人を見てな」
「それからなのね」
「俺達も言いたいよ」
「やっぱりね」
 修と妙も言ってきた。
「そうしたところはね」
「その人を見てな」
「悪い人じゃなかったら」
「それならね」
「とりあえず連れて来てくれよ」  
 悠木はまた言った。
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