生きていていい
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「アンチ君!」
追いついた。
アカネを追いかけていったアンチの手を掴み、彼の動きを止めた。
「待って! 危ないよ!」
「っ……!」
ギロリと友奈を睨むアンチ。彼は動きを止め、やがて急ぐ足を直立させた。
友奈は安心して、その手を放す。
「これ以上は危険だからね。お姉ちゃんは、わたしに任せて!」
友奈は目線の高さをアンチに合わせてほほ笑む。
アンチは片方だけしかない赤い眼で友奈を睨む。
「新条アカネは……姉じゃない」
「お姉ちゃんじゃない?」
そういえば、と友奈は、先ほどのアカネの発言を思い出した。
いらない、使えない。
果たして肉親に使う言葉だろうか。
そう考えている間に、アンチはその目を赤く光らせる。
そして。
「俺は……俺はやはり、怪獣だっ!」
その言葉と共に、紫の閃光が友奈の視界を塗りつぶしていく。
一瞬友奈の視神経をブラックアウトさせてしまうほどの強さに、友奈はバランスを崩す。両目を抑え、ようやく目が慣れてきたとき、目の前にいたアンチの姿は変貌していた。
「アンチ君!?」
その姿を、友奈は二度見する。
さきほどまでの華奢な体を持つアンチとは裏腹に、広い肩幅を持つ生命体。紫の体と赤いゴーグルを付けた怪物が、その場にいた。
怪物の赤い眼に映る友奈の姿。自らが驚いている表情が友奈を見返している。
「もしかして……アンチ君!?」
「俺は怪獣だ……このまま怪獣として生きるしかないんだ!」
「何を言っているの!?」
だが、その問答にアンチは答えない。
その巨腕を放ち、友奈を圧し潰そうとする。
「っ!」
友奈はアンチの動きを見切り、その腕を受け流す。
友奈の隣に立っていた大きな木を殴り砕くその威力に、友奈は目を大きく見開く。
「なんて威力……!」
「はあっ!」
さらに、アンチの攻撃は続く。
友奈へ向けた手のひら。その危険性を察知した友奈は、大きく回避。
すると、その手から黄色の光線___見滝原南に現れた怪鳥の超音波メスと全く同じもの___が放たれた。
巨木の幹を切断するそれは、友奈の視線を一瞬釘付けにする。
さらに、アンチは続けて攻撃してくる。
「はああああああっ!」
「うわっ!」
友奈の目と鼻の先をアンチの腕が掠める。その余波が友奈の顔面に吹き付けられ、友奈は思わず目を閉じる。
「うっ……!」
視界が一瞬闇に包まれ、友奈は数回足を取られる。森という足場の悪さを思い出し、友奈は青ざめた。
だが、アンチがその分かりやすい隙を見逃すはずがない。
始まる、ラッシュともとれる猛攻。だがそれが、友奈に届くことはなかった。
「牛鬼!」
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ