生きていていい
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友奈の前に立つ牛鬼。
花の形をした桃色の盾で防御する牛鬼だが、トレギアとの戦いのダメージがまだ残っている。アンチを弾き返すと同時に、牛鬼の体が力なく落下する。
牛鬼をキャッチする友奈。全身がズタボロの牛鬼を見て、変身に協力してもらう体力がないことを察する。
だが、牛鬼の心配にそこまで時間を割くことは許されなかった。
すでにアンチの拳が、生身の友奈の目と鼻の先に迫っていた。
友奈に少しでも格闘技術が欠けていれば、友奈の体は背後の木の幹と同じように粉々になっていたに違いない。
友奈は格闘技のセンスを駆使し、アンチの攻撃を紙一重で回避し続ける。
さらに、アンチの攻撃一つ一つに対し、生身ながらも反撃を加えていく。拳でくればその肘へ、蹴りでくるならばその膝へ。
真っ向勝負では敵わないならばと、少ない力で反撃を加えていく。
「なぜだ……なぜ、俺の攻撃が届かない!?」
アンチはさらに、その肩幅を広げる。
すると、肩からミサイルらしきものが発射された。
木々を爆散させていくミサイルたち。それは、友奈への道をこじ開け、友奈の体を破壊しようとしていく。
「っ!」
友奈はバク転でミサイルの雨を回避、さらに全速力で周囲を回り、アンチから離れる。
見つけた巨木の裏に隠れる。他の木々に比べて頑丈なそれは、友奈をミサイルの雨から守る。
「はあ、はあっ!」
アンチの息を切らす声が聞こえてきた。
友奈は木陰から様子を窺う。
アンチは膝を折って、友奈を睨んでいる。
「新条アカネの命令だ……俺は、お前を倒す!」
「命令……」
友奈は唇を噛みしめ、駆け出す。
アンチの腕を掻い潜り、一気に接近。腰の入った拳をアンチの腹へねじ込んだ。
「効かないぞ、その程度!」
アンチに対し、友奈は左右の構えを入れかえる。
戦いの代償として、今の友奈には右耳の感覚がない。嗅覚もない。
だからこそ、残った感覚は常人よりも研ぎ澄まされている。
アンチの拳を受け流し、そのまま彼の腕を抱える。そして大きく足を広げ、
「だあああああああああああっ!」
アンチは叫び、手刀を振り下ろす。
友奈は背中を傾けて手刀をギリギリで回避、さらに腕を全身で掴む。
「うおおおおおおおおおおおっ!」
友奈は雄たけびとともに、アンチを放り投げる。僅かながらに勇者の加護を生身の体に流したそれは、圧倒的な質量差を覆し、アンチを当て身投げ。
背中から押し倒されたアンチは、そのまま重力に従い斜面を転がり落ちていく。数回木々にピンボールのように跳ねたアンチは、体を地面に張りつけることでようやく止まった。
「アンチ君!」
アンチを追いかけるように斜面を降りてきた友奈。だが、
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