第二章
[8]前話
「孫の顔も見たし」
「だからですか」
「もうね」
「そうですか」
「思い残すことはないわ」
こう言ってだった。
実際に身体が動かなくなった、身体は日に日に弱っていき幾許もない状況になっていた。それでだった。
萌は夫と話し合って義母を家に迎えた、彼女がずっと暮らしていた家に。すると。
あとどれだけ生きられるかわからない彼女は笑顔で言った。
「最後の望みが適ったわ」
「最後の?」
「最期は家に帰ってね」
そうしてというのだ。
「お父さんのところに行きたかったから」
「そうですか」
「こんなにいいことはないわ」
こう萌に言うのだった。
「本当に最後まで幸せだったわ」
「そう言ってくれるんだ」
息子は母の言葉を聞いて頷いた。
「僕達もそう言ってくれたら嬉しいよ」
「じゃあお互いに嬉しいままね」
「お父さんのところに行くんだね」
「そうするわ」
息子にも笑顔で言ってだった。
薫は静かに眠る様にして息を引き取った、そしてだった。
葬式の時夫婦は亡くなった彼女の顔を見て話した。
「凄く幸せそうだね」
「ええ、満足しきった」
「そうした顔だね」
「ずっと幸せだった思い残すことはないって言われてたけれど」
「最後に家に帰ることが出来て」
「それで旅立ててね」
微笑んでそこにいる彼女の顔を見て話した。
「お義母さん幸せなのね」
「そうだね、じゃあ僕達もね」
夫はそんな母の顔を見つつ妻に言った。
「笑顔でね」
「見送りましょう、さあお祖母ちゃんにお別れの挨拶をしてね」
萌は立てる様になっている息子と娘に言った、そうしてだった。
一家で笑顔で別れを告げた、満足しきって世を去った彼女に。
ずっと家に帰りたいと 完
2022・7・22
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