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俺様勇者と武闘家日記
第2部
スー
名もなき村
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 浅瀬の祠で最後の鍵を見つけてから、およそ半月。
 長い船旅の中、次の目的地であるスー族の大陸が見えてきた。けれど今回は、スー族の里とは反対側の陸地への上陸を目指している。
 なぜなら、そこにはスー族の酋長アナックさんのお兄さんが住んでおり、そこに渇きの壺を持っていかなければならないからだ。
 薄ら寒い青空の下、甲板に出ていた私たちは、この海岸沿いのどこかにあるアナックさんのお兄さんの家を探すため、目を皿のようにして見ていた。なにしろ大きな大陸だ。確か海岸沿いに住んでいるって聞いてたけれど、なかなか人が住んでいるような建物は見つからない。
 無力感を現すようにため息をついていると、何やら船員たちが騒がしくしている。一人の船員がヒックスさんの所へ走っていくのを、私たちは目で追いかけた。
「船長、あそこに何か見えます!」
 一人の船員がとある方向を指差す。すぐにやってきたヒックスさんは、ポケットに入れていた望遠鏡を取りだし、船員が指差す方に向けて覗いてみた。
「見つかったのか?」
 その様子を見ていたユウリが、ヒックスさんたちのもとに向かい尋ねた。
「ええ。おそらくあそこがそうではないかと」
 ヒックスさんが差し出してきた望遠鏡を受け取ると、ユウリは彼が見ていたところと同じ方向に照準を合わせ覗きこむ。
「可能性は高いな。他に似たような建物もなさそうだし、そこの近くまで寄せてくれ」
「わかりました!」
 ユウリの指示通りに船を動かすヒックスさんたち。
 船が近づくにつれ、ようやくそれが一軒の家だということがわかる。よほど気に掛けなければ素通りするくらい小さく、目立たない建物だ。
 海岸付近まで近づき、ゆっくりと船を接岸させている間、下船するために私たちは部屋に戻り準備を整えることにした。すると、隣のルカの部屋の扉が空いている。覗いてみると、私たちと同じように荷物を詰め込んでいた。
「ルカも行くの?」
「当たり前だろ。商人は常に好奇心を持たないと行けないからな」
「そっか。別にいいけど」
 テンタクルスと遭遇してからも、ルカは落ち込むどころか自ら進んで魔物との戦闘に参加している。どうやら色々ありすぎて吹っ切れたのか、不安や恐怖その他諸々を乗り越えたようだ。克服するのはいいけど、イシスの時みたいに一人で突っ走ったりしないかが心配である。
「何してる。置いてくぞ」
 部屋の前にやって来たユウリが不機嫌そうに催促しているのに気づき、私は慌てて身仕度を整える。
「待って、ルカも一緒に行くって」
 そう答える私の後ろからひょっこりと顔を出すルカに、ユウリは瞠目した。
「やっぱり姉と違って判断と行動が早いな」
 ユウリに褒められ、まんざらでもない様子のルカ。まるで実の兄弟のような仲の良さに、僅かながら嫉妬を覚える。
 私はと
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