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俺様勇者と武闘家日記
第2部
スー
名もなき村
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 二人の温度差に、何とも言えない表情で見守る私とルカ。どうやら気づいていないのはグレッグさんだけのようだ。
「だがわし、町を作る知識ない。技術、体力もない。わしと一緒に町作るの、あなたたちの誰か、手伝って欲しい」
 突然の申し出に、ユウリだけでなく、私まで不可解な顔を向ける。
「は!? 何言ってるんだ? そんなこと出来るわけないだろ!」
 彼の言うとおり、私たちはそもそも魔王を倒す旅をしているのだから、ここに留まってそんな気の長いことをするわけにはいかない。
「それって、ここに長い間留まってやらなきゃならないですよね? 私たちにはやるべきことがあるんです。申し訳ないですけど、手伝うことは出来ません」
 私もその申し出に、きっぱりと断る。けれどグレッグさんは納得行かない様子でユウリの方に向き直る。
「あなた、勇者と聞いた。勇者は困ってる人を助ける、聞いた。わしが困ってる、助けないのか?」
「……年寄りのくせに、そういうところは耳聡いんだな」
 脅すようなグレッグさんの言葉に、ユウリの眉が歪む。
「わし、この村なくなって、仲間ほとんど失った。わし、弟のように、強くない。ここに一人で住んでから、ずっと皆のこと考えてる。わし離れたら、失った仲間、皆悲しむ。皆置いて、他の場所に行けない」
 そうか、グレッグさんにはかつての村や仲間に対する彼なりの想いがあるんだ。
 自分がいなくなれば、ここで亡くなった人たちを想う人がいなくなる。ここであった出来事も、やがて風化するかもしれない。ほとんど訪れることのない土地ならば、尚更だ。
 グレッグさんがこの地に留まる理由が、少しわかった気がした。
ーーでも、それでも。グレッグさんには申し訳ないが、私たちにはやらなければならないことがある。
「……俺たちの目的は、一刻も早く魔王を倒すことだ。勘違いしないでくれ」
 その瞬間、グレッグさんの顔から血の気が引くのが、はっきりと見てとれた。
「そうか……。それが勇者か……」
 絞り出すように呟くグレッグさんの目には、私たちに対する失望が滲み出ていた。
 正直グレッグさんのことを思うと胸が痛むが、現実的に考えてもこの中の一人がここに残らなければならないなんて、有り得ない。悪いけど、こればかりは諦めてもらうしかない。
 等と考えていた矢先のことだった。
「あの、もしよければ、おれが手伝います」
『え!?』
 恐る恐る手を上げたのは、なんとルカだった。
「ちょ、ちょっと待ってルカ!? 一体どういうつもり!?」
 思わず大声を上げる私に対し、ルカはいたって冷静な態度で私を仰ぎ見る。
「おれは別に魔王とか関係ないからここに残っても大丈夫ってこと。それに、ここでこれ以上ユウリさんが悪い印象を持たれるのは嫌なんだ」
「何を言ってるのかわかってるの
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