第6章 英雄感謝祭編
第20話 出立
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どっちもアレンのことが好…ガッ!」
グレイが懐かしい感じでそう答えていたが、踏み入ってはいけない領域まで口を走らせてしまい、エルザとミラの鉄拳が降り注ぐ。
「「なんかいった?」」
「いえ、なんでも…」
グレイは怯え切った声でそう答える。
「なあ、ジェラール、グレイの奴何言おうとしてたんだ?」
「…勘弁してくれ、アレン。俺の口からはいえん…」
聡明なジェラールは、いくら恩人のアレンの質問でも、口を開くことはなかった。
だが、それ以降は特に言い合いや喧嘩も起こることなく、順調に首都クロッカスに向けて馬車は進んでいった。…ジェラールは、ナツが気持ち悪そうにしている様子を眺める。もし、ナツが乗り物酔いでダウンしていなかったら、もっとひどいことになっていただろうな、と思い、胸を撫でおろしたのであった。
首都クロッカス
花咲く都ともいわれ、街の至る所に華が咲いている。中央にフィオーレ王の居城「華灯宮メルクリアス」に中央広場「リ・イン・クリスタル」、西の山に闘技会場「ドムス・フラウ」が存在する。また、街の一角にはフィオーレ有数のサマーレジャースポット「リュウゼツランド」が鎮座している。
そんな首都クロッカスでは、街を上げての英雄感謝祭が明日に控えており、すでに町全体がお祭りモードになっていた。
そんな活気ある首都クロッカス中央の華灯宮メルクリアス。その玉座の間にて、王族や衛兵とは違う雰囲気を醸し出している男がいた。
「では、謁見の際にこちらの魔水晶に魔力を込めてもらうと?」
「はい。我が国の伝統的な風習と言えば、特に疑義も持たれないかと」
その男の質問に、王女ヒスイは真剣な表情で答える。
「なるほど。では、繰り返しになりますが、彼には内密にお願いいたします」
「ええ、わかっております。此度の祭事は彼の偉大な行いと生還を祝うもの。無駄な心労は与えたくありません」
その言葉を聞き、男はニヤッと笑顔を漏らす。
「それに、彼の…ハンターとしての魔力と王族である私の魔力を合わせ、オスティウン・ムーンディを開くことで、フィニスを発動させ、世界の破滅を防げるのでしょう?」
「はい。おっしゃる通りでございます。世界の破滅…それはつまり、三天黒龍のうちの2匹。煌黒龍アルバトリオンと黒龍ミラボレアスの復活を阻止し、世界に平和をもたらすことができます」
男は、淡々と、それでいて力強く言葉を発する。
「であれば、彼に伝える必要はありません。もう彼は十分に戦いました。我らの力で三天黒龍の内、2匹の復活を阻止できれば、彼が命を賭けて戦う機会も減るというもの」
「ええ、姫様の言う通りでございます。さすがは美しくもお優しいお方」
男の称賛の声に、ヒスイは表情一つ変えず、言葉を締めくくった。
「では、滞りなく、お願い致します。…バルファルクさん」
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