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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第72話 ある小作戦の終了
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にエル=ファシル攻略部隊がハイネセンに帰投したのは七月三〇日。三月一〇日にハイネセンを出撃した時、艦艇数四九八九隻、戦闘宇宙艦艇四四一〇隻、陸戦要員も含めた総兵員五七万四〇〇〇名だった部隊は、残留している第五四四独立機動部隊や地上軍を含めて艦艇数四〇七八隻、宇宙戦闘艦艇三五〇二隻。総兵員五〇万七七〇〇名での帰還となった。艦艇喪失率一八.二パーセント。兵員喪失率一一.五パーセント。星系の強襲的な奪還作戦に加え、アスターテ星域への侵攻もこなしてこの損害の低さは奇跡に近い、という統合作戦本部の評価を俺はぼんやりと聞き流していた。

 シャトルからハイネセン第一宇宙港のエプロンに降り立った時、生暖かい風が吹きつけてきた。ここを出撃した時は初春の三月。都合四ケ月半も宇宙にいたことになる。降り立つ兵士達も勝利したとはいえ、長期にわたる作戦による疲労は大きい。それでもダレスバッグや雑嚢を持つ彼らは胸を張って、滑走路脇に設置された出迎えスペースにいる家族や友人や恋人に生還の報告をしている。

 だが司令部は簡単に解散とはいかない。統合作戦本部次長が出迎えに来ていて、簡単なレセプションも行われる。それから統合作戦本部まで車で連れていかれ、今度は本部長に作戦終了を報告する。その他細々とした手続きやら何やらで、宇宙艦隊司令部内にある第四四高速機動集団のオフィスに戻り、今後のスケジュールの打ち合わせが終わった時には日付が変わっていた。

 ファイフェルを除けば一番下っ端の俺が、疲労困憊のまま最後にオフィスの施錠をしたあと、司令部地下にある二四時間営業運転しているリニアのホームで、二〇人ばかりの士官に囲まれた時には正直MPを呼ぼうと思った。だがその二〇人が全員第四四高速機動集団の、それも第八七〇九哨戒隊の艦長達であると分かれば、それも不要だった。

「ボロディン少佐……ブライトウェル嬢のこと、申し訳ございませんでした」

 その二〇人の中で、ひと際青白い顔をしているイェレ=フィンク中佐が、敬礼するまでもなく腰を折って、俺に頭を下げた。それに合わせるようにユタン少佐やサンテソン少佐も俺に向かって最敬礼する。深夜とはいえ人通りのないわけでもない宇宙艦隊司令部のリニアホームだ。異様な光景に幾つもの視線が、こちらに突き刺さる。

「……彼女から聞いたんですか、フィンク中佐?」
「はい」
「小官に謝罪など不要ですが、その前に皆さんは彼女に謝罪しましたか?」
「はい……」
「まさかとは思いますが、嬢が一六歳の少女とわかってて、この二〇人で囲ったりはしなかったでしょうね?」
「小官一人が話しました」
「何考えているんですか。仮に話したのが中佐一人でも、彼女は十分怖かったと思いますよ」

 俺が語気を荒げると、フィンク中佐達は項垂れた。以前の父親の部下とはいえ
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