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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第72話 ある小作戦の終了
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第四四高速機動集団は出来たばかりの部隊じゃ。部下もそして自分も、じっくりと時間を掛けて育てていく時期がある」
「はい」
「アントンも生きておれば今頃は艦隊司令官になっておったろうし、シトレ中将は来期宇宙艦隊司令長官改選で推薦されておっただろう。あのパランティアで、自分の手足の長さを間違えていなければな」
「……」
 それは爺様の、無数にある後悔のうちの一つなのだろう。俺に目から見ても大器というべきシトレが、士官学校校長職を通常任期よりも長く勤めていたのも、ポストが空くというより艦隊指揮官としての才覚を疑われていた可能性もあったのかもしれない。
「この戦いが終われば、第四四高速機動集団は少し時間を貰えるじゃろう。じゃが儂は容赦せん。徹底的に鍛え上げるぞ。艦隊も、兵も、貴官もな」

 ドンと音を立てて固く握られた爺様の拳が机に振り下ろされた。淹れなおされたコーヒーカップが音を立てて小さく踊ったのを、俺は黙って見つめるほかなかった。





 そしてこれも予想通りというか。三日後、宇宙艦隊司令長官リーブロンド元帥の名前で、爺様宛に七月一〇日までアスベルン星系を、現有戦力を持って防衛せよとの指令が下る。帝国軍先行部隊と思われる部隊が隣接するローデヴァルト星系に出現したのは、それから五日後の七月四日。数はおよそ一〇〇〇隻。帝国軍部隊に積極的な意思があれば、明後日にはアスベルン星系に突入してくるだろう。

 同盟軍というよりリーブロンド元帥は、残存艦艇のうち七五〇〇隻をアスターテに投入すると決めた。幾つかの星系に一〇〇隻程度の哨戒部隊を配置しつつ、アスベルン星系に七〇〇〇隻を一時的に駐留させる方針だ。エル=ファシル攻略部隊と合わせれば一万隻弱になる。到着は七月一〇日の予定。つまり最低三日間は帝国軍と対峙する可能性があった。

 果たして帝国軍は七月六日。最短でアスベルン星系に侵入してきた。予期していたエル=ファシル攻略部隊も戦闘態勢を整えたが、帝国軍側もこちらが三〇〇〇隻以上と理解するや、星系間跳躍宙域周辺をうろつくだけにとどめた。恒星を挟んでの長距離のにらみ合いは、七月『一一日』にリーブロンド元帥直接指揮の七〇五五隻が星系に到着したことで、帝国軍の撤退によって解消された。

「クソですね。ぶっ飛ばしてやろうかと思いました」

 リーブロンド元帥の乗艦である戦艦アイアースを、爺様と参謀長と帰還するニコルスキーの合わせて四人で訪れたファイフェルはエル・トレメンドに帰還早々、司令部個室でブライトウェル嬢に数学を指導している俺へ、言葉を荒げてぶちまけた。めったにないファイフェルの悪態に、俺以上にブライトウェル嬢が驚いている。

「なんか言われたのか?」
 俺が『生徒』の淹れた珈琲を傾けつつ聞くと、嬢を挟んで反対側に座ったファ
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