第二十八章 わたしの名は、ヴァイス
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治奈は一瞬にして紫色の魔道着姿へと変わると、自分を襲う右手を槍の柄で受け止めていた。
身体ごと突っ込んできた黒衣装の少女、その白く輝く右手を。
だが突進の重みを支え切れずに、身体が後退する。
「おらああっ!」
青い魔道着の魔法使い、カズミの握る二本のナイフが唸りを上げる。
身を低く走りながら、雄叫び張り上げながら、黒衣装の少女へと切り付ける。
黒衣装の少女は冷静だった。
左手でナイフの一撃を弾き、右手を槍の柄から離して治奈の髪の毛を掴む。
ナイフの二撃目をかわしながら、掴んだ治奈の頭部をカズミの頭部へと叩き付けていた。
ごち、薄皮に包まれた骨が衝突して、なんとも重たく痛々しい音が響いた。
「いたっ! カズミちゃんの石頭!」
「こっちの台詞だ!」
などと不毛なやりとりをしている二人の前に、もう黒衣装の少女はいない。
赤い魔道着の魔法使い、アサキへと飛び込んでいたのである。
飛び込み迫りながら、白く輝く右手を突き出した。
その輝きは込められた魔力か、それとも別の力なのか、音もなくアサキの顔面を襲う。
顔を傾けてぎりぎり避けるアサキであるが、既に次の一撃が放たれていた。
アサキは一歩引くが、引いた分だけ詰められる。
引いた分だけ詰められる。
「アサキ! 相手が丸腰だからって、手を抜いてっと死ぬぞ!」
カズミがもどかしそうに叫ぶ。
「違う。まったく隙がなくて!」
強いのだ。この、ふわふわ黒い服を着た黒髪の女の子が。
取り押さえて色々と聞きたいところであるが、そんな余裕はアサキにはなかった。
打ち込む隙がないどころか、かわすだけで精一杯だ。
避けたところ避けたところ、先回りするように光る右手による攻撃がくるのだから。
戦闘用の服でないどころか、まるで羽衣といったふわふわ動きにくそうなものを着ているというのに。
幼い顔で、身体だって小柄で触れれば折れそうなほどに華奢に見えるというのに、そんな少女にアサキは完全に押されていた。
「たった一人じゃと、いうのに……」
「さっきの白い服の女も、あたしら三人でも勝てなかった至垂を一瞬でぶっ飛ばしてたからな。そいつと双子みたいに瓜二つの顔をしてりゃあ、不思議じゃねえのかも知れねえけど……」
呆然とした表情で呟く治奈とカズミ。
あのアサキが防戦一方となれば、容易に加勢出来ないのも無理ないことだろう。
とはいえこうしてばかりもいられない。カズミは首をぶるぶるっと激しく振ると、
「調子こいてんじゃねえぞお!」
ナイフ振り上げ戦線参加だ。
「売られた喧嘩じゃけえ。三人を卑怯とは思わん!」
紫の魔道着、治奈もまた
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