第7次イゼルローン要塞攻防戦B
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砲のエネルギー・チャージが完了すると同時に発射される。
光の塊が帝国軍駐留艦隊の先頭集団を飲み込んだとき、それは爆発と閃光によって彩られた。
旗艦ヴァナヘイムを中心に百隻余の艦船が一瞬にして切り取られて消滅していた。
艦隊司令官ゼークト大将の巨体と怒声は、不幸な幕僚と僚艦たちを道連れに、旗艦ヴァナヘイムごと虚空へと消滅したのだった。
生き残った帝国軍艦艇は事態を察知すると、次々に回頭し、逃走を開始した。
当然のことながら、無謀な玉砕戦法を唱える司令官が戦死した時点で戦闘という名の一方的な殺戮で命を捨てる必要はない。そして打ちのめされて敗走する残存艦艇の中には、司令部の参謀であるオーベルシュタイン大佐の乗るシャトルの姿もあった。
シャトルの座席に身を沈めたまま、オーベルシュタインは沈黙を守っている。彼に言わせればゼークトの行いは無意味でくだらないもの以外の何物でもなく、一時の恥辱にまみれようとも、生きていれば復讐戦の企図もできたものをと、彼は考えるのだが、ゼークトの思考回路ではそれを理解することができなかったという事だろう。
「まあ、よい…」
そうつぶやいて、オーベルシュタインは目を閉じた。
彼の機略に傑出した統率力と実行力が加えられれば何時でも要塞など奪還できる。彼自身はそれを確信しているのだ。問題はだれを選ぶかなのだ…。
そう考え込むオーベルシュタインを乗せてシャトルは、味方艦艇の間をぬって飛び去って行くのだった。
一方イゼルローン要塞の中では歓喜と安堵と興奮が渦巻いていた。
「やった!ヤン提督が勝ったぞ!」
「俺たちの勝利だ!」
「自由惑星同盟万歳!」
「提督ばんざーい!」
兵士たちは歓声をあげ、士官たちは抱き合って喜び、下士官兵たちも口々に勝どきをあげたり、肩を叩き合ったりした。
静かなのは、事態を知って呆然とする捕虜たちと演出家であるヤン・ウェンリーくらいなものだった。
「まったく…」
ヤンは苦笑しつつ、副官グリーンヒル大尉を見やる。
「グリーンヒル中尉、本国に伝えてくれ。何とか終わった、もう一度やれと言われてもできない、とね。私は疲れたよ」
「はい、わかりました」
グリーンヒルも笑顔になってうなずいた。
そこに通信が入る。第四艦隊旗艦オケアノスからだった。
『ヤン、まさかほんとに成功させるとはな…』
「おかげさまでどうにかこうにかってところだよ」
ヤンは苦笑いしながら応じる。
『ま、お前ならなんとかしそうだと思っていたけどな。ところで敵の残存艦艇についてだが掃討するか?』
「いや、その必要はない」
ヤンは即答した。
『なぜだ?こっちには1万以上の兵力があるんだ、この際徹底的にやっておくべきじゃないか?』
「それについては、こ
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