第7次イゼルローン要塞攻防戦B
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人め、語るに足らん」
オーベルシュタインは、冷然たる侮蔑をたたえながら小声で呟くと、踵を巡らせて艦橋を出て行った。
その足で声紋認証型の士官用エレベーターに乗り込むと、彼は60階建てビル並みの大きさの標準型戦艦ヴァナヘイムの艦底部に降りて行った。
「敵艦隊視認、要塞主砲の射程圏内に入りました!」
「さらにその後方に第四艦隊視認、敵艦隊の右斜め後方、要塞主砲射程圏外で停止しています」
「エネルギー充填良し、照準OK。トールハンマーいつでも発射可能です」
オペレーターの報告を聞きながら、第十三艦隊司令官ヤン・ウェンリーは軽く片手を振って命令を発した。
「撃てー!」
ヤンの命令が伝達されると同時に要塞主砲の砲口から充填されたエネルギーの塊が放たれ、帝国軍駐留艦隊に吸い込まれた。閃光が消えたとき先頭に位置していたはずの艦艇百隻余の姿は跡形もなく消え去っていた。それだけではなく先頭集団の後方に位置していた第2陣と直撃を受けなかった左右の艦艇にも大規模な損害を与えていた。
「命中確認!!効果甚大!!」
オペレーターが歓声に近い報告を上げる。ヤンは要塞主砲の威力を実感しながら、再度攻撃を続行するよう命じた。
「第二射用意、撃てー!」
再び光の塊が帝国軍駐留艦隊を直撃した。今度は艦隊の四割の艦船が消滅した。
「なぜ味方が撃ってくるのだ!?」
「ば、バカな…。こんなことが?」
駐留艦隊の指揮官たちは狼狽の極致にあった。彼らは自分たちに向けて要塞が発砲してきた事実を受け入れられずにいた。
「敵襲!敵の攻撃です!」
「どこからだ?」
「要塞から攻撃を受けています」
「そんなはずはない!!要塞は我々のものだぞ!!」
帝国軍の将兵たちにとって、それは理解不能の事態だった。彼らにとっては要塞はイゼルローン回廊における彼らの拠点であり、それが自らに向けて主砲で砲撃を加えてくるなど、想像の域を完全に超えていたのだ。混乱は恐慌を生み、秩序は失われかけていた。
「ひるむな、全艦砲門開け!!」
かろうじて統制を保っていたのは、ゼークト大将の存在によるところが大きかった。彼もまた混乱のさなかにあったが、それでも指揮官としてのプライドによってかろうじて理性と正気を保っていた。そして先程彼が発した攻撃命令は混乱状態にあった艦隊を、一応まとめ上げ、統制を回復させることに成功させたのだった。しかし、一度失われた士気を回復することは不可能であった。
「何ということだ、イゼルローン要塞が我々を攻撃するとは……」
幕僚のひとりが愕然とつぶやく。その声は虚空に拡散して誰の耳にも届かなかった。
「提督、この場は撤退すべきです。もはや我が艦隊に勝ち目はありません」
「ほ、報告!!要塞
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