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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第71話 アスベルン星系遭遇戦 その2
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特異的な才能に左右されるということなのだろうか。

 それではいけない。こういう臨時的な作戦を組まなくてはならない場合はともかく、各機動艦隊には十分な訓練が必要だ。それこそエレシュキガルで行ったような訓練を最低半年。問題はそれを許容するだけの国力が、同盟から失われているということだろう。帝国軍の侵略、数度にわたるイゼルローン攻略戦。アムリッツアでトドメを刺される遥か前から。

 もはや消化試合となり、各部隊が目標としている敵部隊の各個撃破に努める戦況下、爺様がヤレヤレといった表情で席に座るのを横目にしつつ、解決するにはあまりにも大きすぎる戦略課題に暗澹たる気持ちに陥った。


 そして六月二一日〇三〇〇時。

 最後まで抵抗していた敵右翼部隊が三〇〇隻以下まで打ち減らされ、抗戦を断念し星系外へと撤退に移った段階で、我が軍の後方に五〇〇〇隻以上の帝国艦隊を確認することになる。

 時機を逸したという言葉以外が思いつかない段階での出現に、同盟軍は一斉回頭してこの五〇〇〇隻にむかって堂々とした横隊陣を組んで真正面から立ち向かった。勿論この五〇〇〇隻が張子の虎であることは、各部隊の上級指揮官も承知の上の事だったが、勝利による高揚感によって将兵の恐怖は覆い隠され、艦隊戦のダブルヘッダーも問題はない雰囲気であった。

 しかし敵もまた思い切りが良く、『数』としてはまだ三五〇〇隻の戦力を有している同盟軍を見て、あっさりと囮を置き去りにして来た道を撤退していった。その数たったの三〇〇隻。

「まぁ、どうせここに長居することはないじゃろうがな」

 有効索敵範囲内に敵部隊が存在せず、逃げる敵部隊に対して付け馬を送り出し、各部隊に被害状況報告と再編成を指示し、一息ついた上での爺様のそんな呟きが、何故か俺の耳にずっと残るのだった。


 かくしてアスターテ星域アスベルン星系での一連の戦闘は終了する。

 戦闘参加した同盟軍の兵力四八万九〇〇〇名、同戦闘参加艦艇三八六二隻。うち戦死者は四万四八〇〇名余、完全喪失戦闘艦艇五七八隻。帝国軍の戦闘参加艦艇二五〇〇隻余のうち逃走を確認できた艦艇が五六〇隻。中破等で機動力を喪失し降伏に至った艦艇が二三三隻。

 戦闘しなかった三〇〇隻を含めると、星域には未だ一〇〇〇隻近い戦力が残存することになる。が、同時に同盟軍にも戦闘可能艦艇が三〇〇〇隻以上残存する上に、ドーリア星域からの増援が望める状況となった為、その戦力優勢は同盟側に大きく傾き、もはやダゴン星域への帝国軍の有効な攻撃は不可能となった。

 二日後にはドーリア星域からの増援一〇五〇隻が、アスベルン星系に隣接するカフライヤ星系に進入。さらにそこから分遣隊がでて、六月二六日にはダゴン星域との超光速通信が確保されるに至る。


 そして
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