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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第71話 アスベルン星系遭遇戦 その2
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翼部隊の右側の部隊が躍り込む。それによって……

「四四-三。敵左翼右側面」
「ミサイル波状。方位〇二一五、仰角〇.〇五、距離〇.〇〇四光秒」
「四四−三、ポイントXプラス一.八五、Yプラス〇.九、Zプラマイ〇。中性子ミサイル波状三連。着発なし」

 最初に俺が進言した第四四高速機動集団第三部隊による中性子ミサイルの波状攻撃が、前進することで長く伸びた敵左翼部隊の右側面から後方の艦艇をえぐり取った。そして第四〇九は右後退している為、もともといた空間の左半分がぽっかりと開いていて……

「第三四九、突撃せよ」

 戦闘参加していなかった予備兵力であるアップルトン准将の第三四九独立機動部隊が、満を持してその隙間に向かって紡錘陣形を構成しつつ突入する。中性子ミサイルの波状攻撃と突撃砲火によって敵左翼部隊の右半分は一瞬にして壊滅した。そしてアップルトン准将はエル=トレメンドからの命令を待つまでもなく、敵中央部隊の後方へと躍進する。

「四四−一、微速前進二。四四−二左へ」

 これによって敵部隊は三つに分断され、左翼では五〇〇対一二〇〇で正面砲戦、中央では一五〇〇対一九〇〇の半包囲戦、右翼では第四〇九が前進に転じ二五〇対五〇〇で半月陣形の相対戦となった。敵は三つに分断された上に相互の連携が取れるような態勢になく、逆にこちら側は全ての戦線が連結している。指の間に小さなビー玉を挟んでいるような陣形だ。こうなれば時間を追うごとに彼我の戦力被害格差は大きくなるだけ……試合終了だ。

 予備兵力を右翼から迂回させ、左翼端部を支点とした半包囲をもくろんだ俺の作戦構想に比べ、戦闘当初に敵戦闘力の重心点に火力をぶつける爺様の戦闘指揮は、ダイナミックで敵に与える心理的衝撃も巨大なものになる。第三四九の移動距離を短く、かつ効率的に投入したのは見事で、兵力優勢下での急戦速攻を望むのであれば、被害は少し多くなっても『分断し、各個撃破せよ』の基本を貫けと、爺様は教えてくれる。

 だが問題点もないわけではない。時間制限と戦力構成に問題がある故に、司令部からの攻撃座標指示を各部隊へ一つ一つ出さなければならないということだ。これはもうどうしようもないことだが、仮にここに居るのが第四四高速機動集団ではなく、ロボスの第三艦隊だったらどうだったろうか。恐らく爺様の命令をいちいち翻訳する必要性はなく、各部隊が滞りなく滑らかに動き、華麗に各個撃破してくれるだろう。

 今回は敵戦力も同様の攻勢であったため、爺様の火力集中指揮で機動力を補完するというドクトリンは上手く嵌った。しかし爺様がそういうドクトリンを採用せざるを得ないという戦略的な軍事環境が、爺様が部隊指揮をとってからずっと続いているとすれば、同盟の戦力練度は基本的には『動く砲台』でしかなく、あくまでも指揮官の
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