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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第71話 アスベルン星系遭遇戦 その2
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のだが、さらに五〇隻ごとに分かれてチェスの盤面のように配置されていた。つまりは面火力を均一にする為、さらに前進後退による突出部への集中砲火回避もかねての部隊運動だ。こんな運動をするには常に同一部隊としての活動と訓練をしてなければ無理としか言えない。現実として第三五一は戦力の絶対数において一割多いにもかかわらず、被害数も一割半多いという歓迎せざる結果がある。

 敵の中央部隊。これは四つの四〇〇隻前後の部隊の混成集団だ。相対する第四四高速機動集団同様、横一列に部隊を並べている形をとっている。しかし部隊の中央に旗艦があるというわけではなく、戦闘指示とそれに対する艦艇の動きから、向かって右から二番目の集団が他の部隊の先任として指揮していると推定される。

 火力も常識的な前方への面投射を行っている。が、右翼部隊と接している三五〇隻の集団はやや反応が鈍い。これは先任部隊との距離が単純に離れているからだろう。つまりは一五〇〇隻といっても、統一集団で行動することにはあまり慣れてないのかもしれない……これは星域内の巡視を主眼とする、いわゆる『前線の星域防衛艦隊』の通常編制部隊にありがちな問題だ。

 そして敵の左翼。こちらは正直精鋭とはいいがたい。二三〇隻と二八〇隻の部隊が左右に並んで、こちらの右翼(第四〇九広域巡察部隊)と対峙しているわけだが、本来戦力的に不利なはずの第四〇九側がむしろ相手を軽くいなしているといった状況だ。左翼部隊として統一された指揮をとっているわけではなく、左右に分かれ交互にワンツーパンチを浴びせにかかっているのだが、第四〇九側が部隊の重心を左右に動かして、これを巧みに躱している。

 第四〇九広域巡察部隊の指揮官ルーシャン=ダウンズ准将はやや歳のいった人だ。その部隊の特性上、小集団での機動力にはそれなりに実績がある。数的にも質的にも不利であること、敵の攻撃が単純であることを早々に見抜いて、被害軽減に重点を置いた戦い方をしている。これは推定だが、敵の左翼部隊はダゴン星域への妨害活動に参画していた部隊だろう。個々の部隊としての運動に関してはさほど問題点はないが、どちらかが上位に立って指揮しているとは到底思えない。

「以上のことから、敵左翼部隊の抵抗力は小さく、逆に右翼部隊は練度も高く侮りがたいと思われます」
「そこまで敵の状況を推測できるなら、三時間で踏みつぶすだけの手は考えているじゃろうな?」
「一応は」

 ようやく爺様の視線がメインスクリーンから俺の顔に移動する。その顔には『考えていなければ見捨てる』と書いてあるのは明白すぎるほどだ。爺様が顎を小さく上げたので俺は再び舌を動かす。

「即座に予備全兵力を右翼のさらに外側より、敵後方へ向けて投入します」

 主眼が速戦速攻である以上、より能動的に兵力を動かすべきで
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