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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第71話 アスベルン星系遭遇戦 その2
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わる。帝国軍としてはその五時間粘りきれれば、増援が来て戦局の混乱を作り出し勝利する可能性を見出せる。

 こちらの士気は旺盛だ。モンシャルマン参謀長の提言通り、左翼に第三五一独立機動部隊、中央に第四四高速機動集団、右翼に第四〇九広域巡察部隊、そして中央後方には第三四九独立機動部隊が控える。燃料も武器整備も弾薬も十分に各艦に搭載され、休養も取れている。

 問題点があるとすれば、右翼第四〇九広域巡察部隊の兵力が左翼に比して少ないこと。元々広域巡察部隊は独立機動部隊と殆ど任務を同じとするが、より高速で高機動性・偵察能力に優れた部隊で、当然戦艦は配備されているが、宇宙母艦は配備されていない。故に真正面からの殴り合いとなった場合には、独立機動部隊よりも継戦能力に劣るといえる。特に接近戦はあまり得意としない。こういう戦いならば予備兵力としてその機動力を十全に生かすべきかもしれない。

 だが今回は予備兵力として独立機動部隊で最大戦力の第三四九独立機動部隊が控える。もし右翼が圧迫されるようならば、即座にその後背に回り込んで合計一一〇〇隻強の打撃部隊を構成でき、撥ね返すだけでなく逆にぶちのめすこともできるだろう。前世でジェット戦闘機は意図的に安定性を低くしていると聞いたことがあるが、それと同じことだ。用兵の自由度を高めるためのモンシャルマン参謀長の提言に、爺様が即座に『出方に合わせる』と反応したのも、それを理解しているからだ。

 いずれにしても敵と味方の戦力比は、戦闘艦艇だけで約二五〇〇隻対三八六二隻。同一の陣形で相対している以上は、その火力比は一対二.七。予備兵力分を差し引いても一対一.九。方程式に当てはめれば、帝国軍が玉砕するまでに一六時間だが、そんなに悠長に戦いをして損害を出し続ける必要もない。何しろ三時間でケリをつける想定だ。

「敵中央部までの距離六・五光秒」
「敵布陣は銀河基準面に対し水平方向。当艦隊進路方向〇〇一〇時より〇.〇〇九光速で接近」
「機動集団基準有効射程迄、あと五分」

 オペレーター達の報告と共に、各種の情報が怒涛の如く俺の座席前にある端末に流れ込んでくる。より詳細な敵の戦力分布、主要な敵艦と思しき大型艦の種別、敵部隊の戦列の組み方。五分という時間があっという間に過ぎていく。

「撃て!」

 息を飲む司令艦橋の中で、爺様の声だけが響き渡る。すぐにファイフェルが復唱、それをオペレーターがさらに復唱し、直衛戦隊から第四四高速機動集団、両翼の独立機動部隊へと伝播する。声に遅れること三秒。戦艦エル=トレメンドの主砲が八本の光条を正面に投げつける。それに従って他艦も主砲を煌めかせる。

 だが当然敵も黙っていない。こちらよりも本数は少なくとも、的確に砲撃を返してくる。エル=ファシルでの前衛艦隊は一〇〇〇隻程度で
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