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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第71話 アスベルン星系遭遇戦 その2
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隊陣を形成するような強引な直進航路を進んでいる。背後霊の姿はまだ確認されていない。

「司令官閣下」
「三〇分二交代でタンクベット睡眠をとらせろ。飲酒は許可せん」

 声をかけて立ち上がったタイミングでの爺様の返事に、俺は敬礼することなく食事で席を外しているファイフェルに代わって当直のオペレーターに指示を出す。オペレーターはすぐに各部隊旗艦へ通信を飛ばし、同時に戦艦エル=トレメンドの戦闘艦橋にも伝える。

「すみません。ボロディン先輩」
 艦内放送を聞いて慌てて戻ってきたファイフェルの謝罪に、俺は軽く肩を叩いて言った。
「ブライトウェル嬢に言ってお前以外の幕僚全員と司令艦橋オペレーター達の分の珈琲を艦橋まで持ってこさせてくれ。嬢も休ませてやりたいが、こういう時はむしろ動いていた方がいいだろ」
「それ、パワハラじゃないですか?」
「お前も手伝うんだよ、当たり前だろうが。戻ってくるまで副官の仕事は代行してやるから、とっとと行け」
「それもパワハラのような気がするんですか……」

 不承不承と言った体だが、敬礼はしっかりとしてすぐに来た方向へとファイフェルは駆け戻っていく。俺が代わりに爺様の横に立つべく足を踏み出すと、ニコルスキーが口に手を当て苦笑していたのが目に入る。

「何か可笑しいか?」
「いえ。でも何となくわかったような気がするんです」
「何がだ?」
「ボロディン少佐が士官学校の卒業式で胴上げされた理由です」

 ニコルスキーの声は戦闘を前にしているのか、妙に浮ついているように見える。眉を潜めて睨みつけると、奴は肩を竦めてそれ以上は何も言わなかった。





 六月二一日〇〇〇〇時 

 双方の戦力は相対し、互いの意思が戦闘であるとはっきりとわかる距離まで接近した段階で、爺様は麾下全艦に第一級臨戦態勢を指示した。

 敵の防衛艦隊の総数は二五〇〇隻には届かないが、こちらとまったく相対するような立方横隊陣を形成している。当然のことながら前衛に巡航艦、その脇を駆逐艦、僧帽筋のようにガッチリと中央を固めた戦艦と、まったく戦理に則った配置を整えており、中央部が一五〇〇隻、両サイドが五〇〇隻程度の集団と、やや中央に厚みを持たせている。それとは別に敵陣後方に二〇〇隻程度の集団があるが、これは予備兵力というよりは補給と修理などの支援部隊と考えられる。

 敵の別動隊に関してはまだ発見できていない。恐らく偵察用スパルタニアンの活動範囲外をさらに大きく迂回して、我が軍の後背に回り込もうと考えていると推定されるが、かなり広めの索敵網を敷いているにもかかわらず引っ掛からないところを見ると、時間的余裕は五時間程度あるとみていい。

 その推測が正しければその五時間で前面の敵を打ち破れば、星系全体での戦いも終
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