第二部 1978年
ソ連の長い手
燃える極東 その3
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ートが、発射音を奏でながらロケット弾を次々に斉射する。
この発射装置は、世界最初の自走式多連装ロケット砲、82mm BM-8の系譜をひく。
最前線にあるドイツ国防軍兵士の心胆を寒からしめた、オルガンに似た発射音。
『スターリンのオルガン』と恐れられた。
機銃で払われても払われても突撃してくる、天のゼオライマー。
恐怖に慄いた衛士が叫んだ。
「こいつぁ、化け物だ!」
今まで戦って来たBETAは物量こそ赤軍を圧倒するも、最後には押しとどめることが出来た。
ミサイル飽和攻撃、光線級吶喊、戦略爆撃機による空爆……。
硬い殻を持つ突撃級など自走砲の榴弾で背面から打ち抜けたものだ。
しかし、この日本野郎は違う。
砲火の嵐どころか、ミサイル飽和攻撃も物ともせず、全てを睥睨する様に峙つ。
ここで退けば、ソ連赤軍全体の士気に影響を与えるのは必須……。
連隊長は、管制ユニットの中で深い溜息をついた。
我等が敗退すれば、18に満たない子供に銃を担がせて送り込むほかはない……。
中ソ国境に居る蒙古駐留軍を引き抜くにも限界がある……。
男は、女・子供までかき集めて衛士の訓練を始めているソ連赤軍の様を密かに憂れいていたのだ。
現在ソ連赤軍の青年志願兵はほぼ尽きようとしており、300万人の兵力維持はとても厳しい状態
非スラブ人の中央アジアやカフカスに在っては、15歳まで徴兵年齢を下げていた。
1918年のボルシェビキ革命以来、急激に識字率の向上を果たしたロシア社会。
僅か50年余りで、すさまじい勢いの少子化が進んでいた。
1945年に終えた大祖国戦争(第二次大戦のソ連側名称)によって、2000万人の成年人口を喪ったのも大きかろう。
女子教育の普及や婦人参政権を始めとする婦人の社会進出は、ロシア女性の価値観を変容させるに十分であった。
またスターリンの死後、1955年に堕胎罪の廃止も少子化を勧める遠因になった。
その様な状況にあっても、ソ連政権は婦女子や年少者の徴兵を止めなかった。
理由は、実に単純である。
思想的に未熟な少年兵は、思考操作や洗脳を施すのに労力がかからないからである。
そう言った理由からソ連赤軍は少年兵への依存度を高めていくことになった。
「第二中隊は、戦闘指揮所の要員と共にウラジオストックにまで下がれ……」
突如として第43師団の本部より指令が入る。
第二中隊は確かグルジア人の政治局幹部の子息が居る部隊……
自分達は捨て駒になって幹部の息子を逃がせという指示か……
だが、我らが犠牲になってこのマシンを手に入れれば、ソ連の輝かしい栄光は再び全世界を照らすであろう。
そう考えなおすと、吶喊をかけた
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