暁 〜小説投稿サイト〜
渦巻く滄海 紅き空 【下】
六十一 外待雨が止む時
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「あの、うちはサスケは役に立つのか」
「イタチの弟だ。使い道はある。それに、実力を確かめる為に八尾回収へ向かわせた」
「…………」


仮面の男と彼──『暁』のリーダーとのやり取りを、ナルトは黙って聞いていた。
内心、八尾という単語に反応を示していたが、それを億尾には出さす、涼しい顔で口を開く。


「イタチの弟でも単独での八尾回収は難しいだろう」
「問題ない。ゼツに監視させている。万が一があれば、ゼツが手を貸す手筈だ」

ゼツがこの場にいない理由を口にした仮面の男に、一先ず納得はしたらしい。
痩せこけた頬で彼は小さく唸った。


「最悪、八尾の尻尾だけでも一本切り落としてくれれば御の字…」
「そういうことだ。それで死んだらそこまでの奴だったというだけ」

辛辣な言葉を続ける双方の会話を素知らぬ顔で聞き流していたナルトは、独り言のように呟いた。


「だが、あのイタチの忘れ形見だ。手懐ければ何かしら役には立つ。死なすには惜しい」
「…それもそうだな。鬼鮫を同行させよう」


さりげなくサスケの寿命を延ばしたナルトは、不意に街向こうから此方へ近づいてくる気配を感じ取った。まだ彼は気づいていない。相手は彼のテリトリーである雨の領域に足を踏み入れる一歩手前だ。


ナルトは仮面の男に目配せをした。
仮面の奥で頷きを返した男を認めると、外へ足を向ける。

濡れた空気に軽く身震いをし、纏わりつく雨粒に嘆息したナルトは、うんざりとした表情をわざと浮かべた。
絶え間なく降り続ける雨の中、肩越しに振り返る。


「たまには陽の光を浴びたらどうだ」

ナルトの視線の先を追って、彼もまた久々に眼を外へ向けた。


細かな雨が静かに降りしきる街並み。
自分が支配するこの里の上空には重苦しい雨雲が広がっており、陰鬱な雰囲気が常につき纏っている。
ナルトに促され、彼は静かに、ペイン六道のひとりを操った。


【雨虎自在の術】。
輪廻眼とチャクラ受信機を応用した感知忍術であり、雨雲を操り特定の場所に感知術を付与した雨を降らせることで、降雨範囲に入った侵入者を即座に感知する術だ。


ペイン六道がひとり、天道が術を解除する。
やがて雨脚が弱まり、陰鬱に沈んだ街へ陽射しが降り注ぐ。
その眩しさに、彼は眼を細めた。
いつも気が張っている落ち窪んだ眼窩がやわらかく、天から射し込む光を見つめる。


そういえばこの街で晴れ間を仰いだのはいつぶりだったか。


「この街で青空を拝むのも悪くはないな」


ナルトに従い、術を解いた彼は、雨上がりの空を眩しげに見上げた。



際限なく降り続ける雨をあっさり中断させた彼に対して思うところはあったが、ナルトは素知らぬ顔でその
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