第121話『雨は上がって』
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「今のお前に少し似てるが、とにかく"器用"だった。制限がかかる中で、あの人は自由に魔術を組み上げていたんだ。お前が使う技に似た技も見たことがある。だから戦闘技術も優れていて、そのうち"風神"なんて呼ばれるようになったんだ」
「へぇ……」
驚きの情報の連続で、ついにリアクションすらまともに取れなくなった。まとめると、父は凄腕の魔術師だったということだろうか。
確かに影丸が師匠と呼ぶならば、それくらいの実力があって然るべきだ。
「そしてあれは忘れもしない15年前。俺と師匠が初めて会った時のことだ」
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今から15年前のこと。
俺は捨て子だった。
物心付いた時には既にスラム街に住んでいた。スラム街つっても、都市の近くの治安が悪い所って意味だけどな。
親も兄弟もなく、知り合いも全員ホームレス。
盗みや暴力なんて日常茶飯事だった。何せその日を生きるために必死だったからな。
するとその日は訪れた。
日課のように喧嘩をしていると、自分の右手に鱗が生え、爪が鋭く伸びていることに気づいた。
それでそのまま相手を殴ったら、血塗れで倒れちまったんだよ。
幼い俺は理屈も考えず、強くなったって喜んだっけな。
今思えば、これが俺の能力の目覚めだった。
そっからは単純だ。喧嘩を吹っ掛けては相手を倒し、持ち物を奪う。
その頃には左手や両足も龍になってて、喧嘩は負けなしだった。
そうやって子供ながらにスラム街を牛耳ってたある日、師匠はやって来たんだ。
その時は確か、魔術連盟より派遣されて俺を保護しに来たとか何とか言ってたな。
まぁ当時の俺にはどうでも良かったから、すぐに噛みついたけどよ。
結果は当然返り討ち。並の相手ならともかく、魔術師相手に敵う訳がなかった。
そして俺はそのまま師匠に保護され、魔術連盟に引き取られた。
結論から言えば、保護されて良かったって思う。そりゃ衣食住が提供されるから、明日のことを心配する必要がなくなったからな。
俺はそうやってすくすくと育つ一方で、師匠に魔術を習うことになった。
正しく魔術を覚えて、人を傷つけるのではなく人を守るんだ、って散々言われたよ。
そんな師匠が凄くカッコよく見えたし、俺の魔術師の理想でもあった。
でも保護されて1年が経った頃、師匠は俺の前から姿を消した。
何も言わず、書き残すこともしてなかった。
結局それ以来、師匠と会うことはなかった。
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「まぁ俺と師匠の出会いはこんなもんだ。スラム街の悪ガキが拾われたってだ
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