いらない
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奈はアンチを助け起こす。だが、痛みに顔を歪めるアンチは右腕を抑えている。友奈はローブをめくり、腫れあがったアンチの腕を撫でた。
「ひどい……なんでこんなことをするの!」
「うるさい! そいつが欲しいなら上げるよ!」
「待て! 新条アカネ! うっ……」
追いかけようとするアンチだが、腕の痛みに体勢を崩した。
新条アカネ。
思わずアンチの口から現れたその名前が、友奈の口に反芻された。
「もう……消えて!」
アカネはまた、スマホを振り上げる。またしてもアンチに投げつけられるが、今度は友奈がそれをキャッチ。
「消えてって……何でそんなことを言うの!?」
友奈は目を大きく見開いてアカネの両肩を掴む。
「アンチ君とどんな関係かは知らないけど、家族でも友達でも、消えてとか、いらないとか……」
「さっきから五月蠅い! 何なのアンタ!」
アカネが両肩にかかった友奈の腕を振り落とし、そのまま突き飛ばす。
何度も同じ手を食らわないよう、友奈はあらかじめ腰に力を入れておいた。
武術によって鍛えられた体幹は、アカネの突き飛ばしを反作用によって跳ね返し、逆に彼女がしりもちをついた。
「あ、大丈夫?」
思わず友奈は手を伸ばした。
そのまま、アカネが手を掴んでくれれば引っ張り上げようとしていたが、アカネは逆に友奈の手を叩き払った。
「えっ……!?」
「……殺す……!」
今の転倒で、アカネの眼鏡が外れている。
裸眼で見る彼女の表情には、怒りが込められていた。
そして、それ以上に、友奈はショックを受けていた。
今叩かれた彼女の腕。色白の肌色のはずなのに、黒い紋様が刻まれているように見えたのだ。目の錯覚だと。そう、思いたかったのに。
冷たい目をした少女は自力で立ち上がり、静かに右手を付きだした。ゆっくりと袖が落ち。
彼女の右手に、改めて、黒い刺青がその姿を現した。
どこか、ベネチアンマスクを連想させる模様。それを見た途端、友奈は反射的にその名前を口走った。
「れ……令呪っ!?」
「……トレギアッ!」
アカネが叫ぶ。
令呪。それは、聖杯戦争の参加者にのみ所有を許された、呪いの紋章。三画ある令呪、その一画が蒼い光とともに消失。その魔力が消費され、発動していく。
すると、蒼い闇が彼女の背後から突きあがって来た。
あたかも柱のように高く、竜巻のように渦を巻き。
やがて、その中心に赤い眼が輝く。
そして、闇を切り裂き現れたのは。
「あなたは……トレギアっ!」
その姿に友奈は叫んだ。
フェイカーのサーヴァント、ウルトラマントレギア。
闇の仮面が特徴の彼は、友奈の姿を見下ろす。
「やあ、セイヴァー……何の用だい?
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