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俺様勇者と武闘家日記
第2部
スー
テンタクルスとの戦い
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暴れている。そのため今も波が何メートルもの高さで舟を激しく揺らしている。
 ヒックスさんの言うとおり、ここは逃げた方がいい。私たちは揃ってうなずくと、すぐさまこの場から立ち去ったのだった。




 テンタクルスから逃げ去り、急いでヒックスさんの船に戻った私たち。
 あのあとすぐにユウリは自分でベホイミを唱えていた。あとから聞いたら骨が何本か折れていたらしい。よくその状態で私を抱えたものだ。
 そしてヒックスさんは操舵室へと戻ると、急いでこの海域から脱出するため舵を取った。
 ルカは今になって緊張の糸が切れたのか、その場にしゃがみこみ、しばらく茫然としている。
「ふぁっくしょん!!」
 そして私はというと、海に落ちてずぶ濡れになった服を着替えるため、自分の船室へと戻っていた。
 着替え終わったあとで、船室のベッドで一息つく。その反動により、ベッドの上で僅かに転がる鉄の爪に私は目を留める。
「師匠……。やっと師匠の武器、使えたよ」
 カザーブで師匠から譲り受けた鉄の爪。もらった当初は威力の高い初めての武器に心を踊らせ、積極的に使っていたときもあったのだが、レベルが上がるにつれ、いつしか思うように使いこなせなくなっていった。いざ戦闘で使おうとすると、今まで素手での戦い方に慣れていたせいか、使えば使うほど戦闘の動きを遅くした。
――もしかしたら、レベルの低い私では師匠の武器を完全に使いこなすことはできないのでは、と次第に思うようになった。そしてその不安をある種の呪いのように自身の心に縛り付けていた。気づけばずっと、鞄の中にしまいこんだままだった。
 でもあのとき、ユウリを助けたい一心で出した師匠の武器が、私に勇気をくれた。そしてこの武器のおかげで、ユウリを助けることができたのだ。
 着替えも終わり、皆の様子を見るため再び甲板へと向かうことにした私は、途中でずぶ濡れのまま部屋に向かおうとしているユウリとばったり会う。
「あっ、ユウリ! 怪我の方は大丈夫なの?」
「ああ。お前のおかげで無事だ」
 いつになく素直なユウリに、私は少し面食らった。
「そ、そっか。それならよかったよ。それで、ルカの様子はどうだった?」
 なんとなく調子を狂わされたのと気恥ずかしさから、半ば強引に話題を切り替える。
「大分ショックを受けていたみたいだが……。きっと大丈夫だろ」
 どことなく確信めいた表情で答えるユウリの言葉に、私は心の底から安堵する。
「ユウリが言うならきっと間違いないね。そうだ、海に落ちたとき、助けてくれてありがとう」
 何気ない笑顔で返したのだが、ユウリは私を真摯に見つめている。
「お礼を言うのは俺の方だ。こっちこそ、助けてくれてありがとうな」
「へっ!? あっ、いや、仲間だもん、助けるのは当然だよ! ユウリが無事で、
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