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俺様勇者と武闘家日記
第2部
スー
テンタクルスとの戦い
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動く。どうやら振り落とそうとしているようだ。
 私は腕にしがみつき、必死で耐える。両腕を回しても届かないほど太いテンタクルスの腕は、ぬめぬめとして滑りやすく、体全体に力をいれないと振り落とされそうだった。
 それでもなんとか耐え凌ぎ、落ち着いたところで別の腕に移動する。そうして何度も跳び渡り、ようやくユウリを拘束している腕の近くまで近づく。
「……ミ……オ……」
「ユウリ!!」
 苦しそうな表情で私の名前を呼ぶユウリ。もはやいつもの飄々とした姿はどこにもなく、テンタクルスに握りつぶされていく彼の未来の姿が脳裏を過る。その瞬間、一刻も早く彼を助けなければというその思いが、あらゆる恐怖や不安を吹き飛ばした。
「ユウリを離して!!」
 星降る腕輪の力により最大限の速さで駆け出した私は、ユウリに巻き付いている腕に向かって飛び降りると、勢いよく『鉄の爪』を装備した右手を振り下ろした。
『??????!!』
 人間には聞き取れないほどの高音が海上に響き渡る。そして、ユウリを拘束していた太い腕が、私の放った攻撃によって真っ二つに切り裂かれた。
 体が自由になったユウリは宙に投げ出され、そのまま海に落下する。そしてそれは飛び降りながらテンタクルスに攻撃した私も、同じだった。
「わああああっっ!?」
「ミオ!!」
 ユウリが手を差し伸べるが、届かない。
 ザバーン!! と盛大な水飛沫と共に、私とユウリはそれぞれ海に落ちた。
「ユウリさん、ミオさん!! 大丈夫ですか!?」
 どこか遠くの方でヒックスさんの声が聞こえる。だが今の私はそれどころではなかった。なにしろ今まで海に縁のなかった私は泳げないのだ。なんとか水面に上がろうと水中でもがき続けているが思うように進まず、逆にどんどん海の底に沈んでいく。
 まずい、このままだと息が出来ない!
 必死になり、さらに手足を一心不乱に動かしていると、ふいに腕が引っ張られた。そしてそれがユウリによるものだということに気づき、次の瞬間には彼に抱き抱えられていた。
 私は彼にしがみつきながら、極限まで息を止めていた。もうダメだと諦めかけてたとき、ようやくヒックスさんの舟に到着すると、二人揃って海面に顔を出した。
「ミオさん、手を!!」
 ヒックスさんが手を伸ばす。無意識に私はヒックスさんの手を取り、そのまま舟に上がった。次いでユウリも自力で舟に乗る。
「うっ、うわあああああ!! アネキ!! 無事でよかった!!」
 涙を流しながら、ルカが私に抱きついてきた。彼も心配してくれていたのだろう。私もまた最愛の弟を抱きしめ返した。
「皆さん、テンタクルスが怯んでいる間に逃げましょう!!」
 おそらく弱点だったのだろうか。私に切り裂かれた腕は思いの外ダメージが大きかったのか、絶叫をあげながらその場でジタバタと
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