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俺様勇者と武闘家日記
第2部
スー
テンタクルスとの戦い
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い波に揉まれながら勢いよく櫂を漕いだ。一方私とルカは振り落とされないよう、必死に舟の縁にしがみついていた。
 やがてテンタクルスとの距離はどんどん離れていき、大きな船に近づいていく。
 だが、後もう少しで到着するというときだ。私たちに気づいたテンタクルスが、ものすごい早さでこちらにやってきた。どうやらもう片方の目で私たちを捉えているらしい。
「うわああああっ!!」
「いやああああっ!!」
 ルカの絶叫に、私も泣きそうになって悲鳴を上げる。あんな大きな魔物に追われるなんて今まであるはずもなく、絶望に似た恐怖感が襲いかかった。
「落ち着け!! 暴れると振り落とされるぞ!!」
 そう言いながらユウリは私たちの前に立つと、剣を抜いた。と同時に、テンタクルスの腕が再び私たちの舟に襲いかかってくる。
 ズバッ、と言う小気味良い音と共に斬撃が生まれた。ユウリがテンタクルスの腕を斬り裂いていたのである。
 だが、襲いかかってくる腕は一本だけではない。ユウリは目にも止まらぬ早さで、次々とその腕を舟に近づけないよう捌いていく。
 それでも、次第にテンタクルスのパワーに圧され、ユウリの表情が険しくなる。
「くっ……!」
 この状況を見て、私は歯がゆさを感じていた。
 テドンでユウリにあれほど自信を持って言ったにも関わらず、未だ私の拳は未知の魔物に恐怖を抱き震えたままだ。ユウリに心配かけさせないくらい強くなると宣言したあの頃の私は、一体どこへ行ってしまったのだろうか。
 ふと無意識に自分の鞄に視線を向ける。けれど、鞄を開けようとする手が動かない。今だからこそと心に決めるも、あと一歩のところで揺らいでいた。
「ユウリさん、危ない!!」
 ルカの叫び声と同時に、横から一本の腕がユウリに向かって伸びてくる。死角となっていたのか、ユウリが反応する前に、その腕はユウリの体に巻き付いた!
「ユウリ!!」
 巻き付かれたユウリの体が舟を離れ、宙に浮く。身動きが取れなくなり、彼はすぐさま呪文を唱え始めた。
「ベギラマ!!」
 深紅の炎が、テンタクルスの腕を焼く。だが、少し焦げただけで ほとんど効いていないようだ。
「くそっ!!」
 相手が脅威ではないと感じたのか、テンタクルスはユウリをさらに締め上げる。
「ううっ……」
 ユウリに苦悶の表情が広がる。このままではユウリは握り潰されてしまう。
「アネキ!! どうすんだよ!!」
「……!」
 ルカの悲痛な叫びがこだまする。考えている暇はない。ユウリを助けなきゃ!
 私は決意を固めると、鞄の中からあるものを取り出した。
「ヒックスさん!! 舟をユウリの近くに!!」
「は、はい!!」
 と同時に、私は一番近くにあるテンタクルスの腕に跳び移る。
 それに反応したのか、私が乗っていた腕が激しく揺れ
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