第2部
スー
テンタクルスとの戦い
[1/6]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
「な、なにこれ……!?」
それは、体長が十数メートルはあると思われる、巨大なイカの姿をした生き物だった。人の頭よりも大きな目をギラギラと光らせながら、木の幹よりも太い足をくねくねと何本も動かしている。船に乗ってから海に生息する魔物と戦ったことは何度かあるが、これほどまでに巨大で強そうな生き物と出会ったのは生まれて初めてだった。
「海の魔神とも言われる、テンタクルスという魔物です。出会ったら最後、生きて帰った者はいないといいます」
「なっ、なんでそんな魔物がこんなところに!?」
意外にも冷静なヒックスさんの説明に、途端にパニックになる私。
「今はそんな話をしてる場合じゃないだろ!!」
ユウリに叱咤されても、この状況に慣れていない私は動揺を抑えることができなかった。
「正直俺のレベルでも倒せるかわからない。ここは振り切って逃げた方がよさそうだ」
そのセリフは、不安定な私の心をさらに悪化させた。この絶望的な状況の中、生き残るにはまず大きな船に戻らなければならない。だがここから船まではまだ大分距離がある。その間に無事に逃げきれるか、さらに不安が頭をもたげる。
「あいつが触腕を振り下ろしてきたら終わりです。どうしますか?」
ヒックスさんの言葉に、いつになく深刻な表情で考えるユウリ。しばらく考え込んでいたが、やがて何か閃いたように口を開いた。
「……確かテンタクルスは、視力が優れてるんだったな?」
「はい。遠く離れたあれの棲息地から我々を見つけたのもそのせいでしょう」
「なら一つ賭けに出る。ヒックス、俺が合図をしたらすぐに船まで向かうぞ」
「わかりました」
そう言うと、ユウリは目を瞑り集中した。おそらく呪文を唱えるのだろう。
一方舟の上では何もできない私たちは、固唾を飲んで二人の様子を見守ることしかできなかった。
しばらくすると、テンタクルスは私たちの存在に気が付いたのか、さまよっていた焦点を私たちに合わせると、急に鋭く目を光らせた。そして、敵意に満ちた目を向けながら、ゆっくりと近づいて来たではないか!
「こっちに来る!!」
近づくにつれ、波が高くなり舟が大きく揺れ動く。そして自分の間合いに入ったとたん、突然テンタクルスが一本の腕を真上に振り上げた。
まずい、叩きつける気だ!!
こんな小さな舟など、一撃で沈んでしまう。けれど、行動が制限されている今の状況では、どうすることもできない。
思考が停止したまま、テンタクルスの腕が振り下ろされる様を凝視するしか出来ないでいると、
「ライデイン!!」
海面を閃光が疾走する。ユウリの放つ呪文がテンタクルスの目を直撃したのだ。テンタクルスは目を灼かれ、振り下ろそうとした腕がびくりと大きく痙攣する。
「今だ!!」
即座にヒックスさんは舟の舵を切った。そして荒
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ