南ことりと白瀬楽人
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」
「いや、いいです。私早く帰らないと」
そう言って帰ろうとすると腕を掴まれた。
「やめてください!」
「なぁことりちゃん! 俺よ、マジで今困ってるんだよ!! 金が要るんだよ! このままじゃ生きていけないんだよ!!」
「離して!!」
振りほどこうとするけど力が強くて離れられない。
「またいい事してやるからさぁ!!ほら、見ろよこれ!!」
男はポケットからあの注射器を取り出した。
「あ……」
あの感覚を思い出す。何もかもがどうでも良くなってしまうほどの快感。全身に広がるあの感覚。
いや、何考えてるの私! もうやらないって決めたのに。でも、忘れられない。頭がそれでいっぱいになる。今ならまたあの感覚を味わえる。滅多にない機会だ。
……1回だけなら。
そんな考えが頭をよぎる。
今まで大丈夫だったんだ。久しぶりに1回やるくらいなら大丈夫。
「ぃ……一回……だけなら……」
あぁ、言ってしまった。受け入れてしまった。また私は今からあの感覚を味わうことになるんだ。体が震え、口がにやける。
そうして彼についていこうとしたその時。いきなり拳が飛んできて男の顔に直撃する。男は数歩分後ずさって倒れた。そして彼と私の間に帽子を深く被った人が立ちはだかった。
「彼女に……ことりちゃんに、近づくな!!!」
顔は見えないけど声で分かった。間違いない。昔から何度も聞いてきた。彼は……
「楽人……くん……?」
────────
殴った拳がじんじん痛む。これだけ時間が経ってこの男、まさかまたことりちゃんを狙うなんて。許せない。
「ッ……おい、テメェ……何すんだオイ!!!」
男が起き上がり、こっちに向かってくる。よく見るといつの間にか手に警棒を持っていた。まずい。こんな場面にでくわすなんて思ってなかったから今は武器も何も持っていない。咄嗟に攻撃をかわそうとするがリーチもあって思いっきり左膝にくらう。
「がっ…………!!」
思わず倒れ込む。頭を蹴られ、帽子がとれる。
「ん? お前もしかして落人か? テメェこのクソ嘘つきが!!!!」
さらに腹や腕に蹴りや警棒が打ち込まれる。
「ガホッ!ゲホッ!!」
痛い。多分左膝と右腕は折れた。
「おい、知ってるか? あの後な、1週間くらいしてカズは捕まったんだ。薬を購入してた事がバレて! 庇ってくれたみたいで俺は捕まらなかったんだけどよ……なぁ! あれから俺たちはこいつに関わらなかったのによ! おかしいよな
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