第三章
[8]前話
「遠慮なく。お金はいりません」
「そうですか、では」
「いただきます」
「そうさせてもらいます」
人々もそれならと応えてだった。
梨を受け取って食べはじめた、するとだった。
「美味いな」
「そうだな」
「これは美味い」
「いい梨だな」
「全くだ」
「どういうことなんだ」
助米は店の席に座ったまま呆気に取られていた。
「これは」
「さて、全て差し上げましたので」
道士は梨がなくなったところでこう言った。
そして何処からか取り出した斧で梨の木を切り倒した、そうしてその木を担ぐと西安の人々に言った。
「では私はこれで」
「は、はい」
「あのその木を担いでですか」
「それで帰られますか」
「途中で売りますので」
問題ないとだ、道士は笑って言ってだった。
梨の木を軽々と担いで立ち去った、誰もがその姿を呆然として見送ったが。
気付くとだ、助米の店の梨がだった。
「あれっ、ないぞ」
「一個もな」
「なくなっているな」
「どういうことなんだ」
「これはまさか」
ある者が気付いた。
「あの道士の人が振舞ってくれた梨はこいつの梨か」
「助米が売っていた梨か」
「それだったか」
「そうだったんだな」
「おい、売りものがなくなったぞ」
助米自身はこれ以上はなく怒っていた、見れば卑しい顔が真っ赤になっている。
「俺はこれからどうすればいいんだ」
「それは自業自得だろ」
「今まで暴利を貪ってきたからだ」
「あんまちケチで悪どく儲けたからだ」
「自分のことしか考えないからだ」
西安の者達はその助米を蔑んだ顔で見て哂って話した。
「そうなったんだ」
「あの時道士さんに優しくしていればそうはならなかった」
「そもそも今まで儲けたからいいだろ」
「それで充分だろ」
「充分な者か、俺はもっと儲けるつもりだったんだ」
助米は周りに言われてもまだ怒って言うのだった、地団駄も踏んでいる。
「それを潰しやがって。あの道士絶対に許さんぞ」
「やれやれ、こいつは駄目だ」
「全く反省していないな」
「反省する奴じゃないことはわかっていたが」
「これはどうにもならないな」
西安の者達はそんな助米を見て呆れた、そして彼はこの後も反省せず悪どく儲けようとして自分のことしか考えず。
挙句に誰からも見放されて家族も逃げ出し誰からも相手にされなくなってだった。
商売も出来なくなりもの乞いとなって野垂れ死んだ、人々はそんな彼を見て卑しい輩はこうなるものだと話した。
ケチな梨売りの因果 完
2022・3・13
[8]前話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ