第四章
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「何の問題もないですよ」
「それが君の考えか」
「はい、それに一人が駄目でも代わりは幾らでもいます」
平穏は表情を変えずにこう返した、ここで校長のこめかみがぴくりと動いたことには気が付かなかった。
「何人も全国区になれば」
「いいか」
「はい、そうじゃないですか」
「よくわかった、もう君はいい」
校長は目の光を怒らせて答えた。
「剣道部の顧問から解任だ、そして以後現場に出ない様に教育委員会に話す」
「教育委員会に」
「そうする、君の発言や行動を全てな」
そうするというのだ。
「そしてだ」
「そしてですか」
「そうなる様にする、私は何故君が全国大会を目指しているかわかったからな」
それ故にというのだ。
「君は生徒が強くなることを願っていない」
「願っています」
「その生徒が全国区に出れば顧問の君の名が上がる」
そうなることを指摘した。
「それが狙いだ」
「どうしてそう思われるんですか」
「今君は言った」
平穏を指差しての言葉だった。
「代わりは幾らでもいる、生徒は道具じゃない」
「道具、ですか」
「君の名声を上げる為のな、名声を上げて出世や県の剣道会での地位の確立も考えているのだと思うが」
そうしたことも察して指摘した。
「しかしだ」
「しかし?」
「生徒は人間だ」
こう言うのだった。
「君の道具じゃない、教育で立派な人になってもらうが」
「それでもですか」
「君の道具ではない、生徒を幾らでも代わりの聞く道具と思っている君はだ」
平穏に彼の本質を突き付けて話した。
「教師になってはいけない、二度と現場に立てない様にする」
「どうしてもですか」
「そうだ、どうしてもだ」
こう告げてだった。
校長は平穏を剣道部の顧問から解任しそのうえで彼を学校から去らせた。以後彼は教壇に立たず県内の教育の閑職に追いやられたが。
状況を見ていた生徒の一人が密かに撮影していた彼の指導の場面をユーチューブ等に流すとだった。
「何だこの屑!」
「この教師最低だろ!」
「誰だこいつ!」
「さっさと特定しろ!」
「何処のどいつかわかったら只じゃおかねえ!
「住所晒してやれ!」
「県の教育委員会に抗議しろ!」
視聴者達の怒りが爆発した、そして。
動画は一気に拡散されてだった。
彼の氏名や住所、今の職場までわかった、そうして。
「屑教師只じゃおかねえ!」
「生徒に謝れ!」
「生徒はお前の道具じゃねえぞ!」
「暴力反対!」
「ブラック教師を許すな!」
抗議の電話まで殺到し職場にデモ隊まで来てだった。
平穏はいられなくなり退職した、そうして実家に引き籠る様になり自分の部屋から一歩も出ることはなくなった。
剣道部には新たに顧問がついたが。
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