ノアの箱庭
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、すぐに元通りに落ち着いた。だってジャックは少しはやかっただけ。わたしたちはみんなもうすぐ死ぬのだから。
「ねぇマリー」
わたしはマリーに向かって言った。
「『ノア』がみんないなくなったら、マリーはどうするの」
「そう、ね…」
マリーは困ったように笑った。
「どうしようかしら」
「みんな死ぬ前にきっと新しい『ノア』が産まれるから大丈夫よ。ね、マリー」
アミが笑って言った。
「そう、ね…」
マリーは手を伸ばしてアミの頭を撫でた。
「マリーどうしたの。何で泣くの」
「マリー?」
みんなが朝食を食べる手を止めてマリーの周りに集まってきた。
マリーは怒ったような顔で、涙をこぼしていた。
「マリーどこか痛いの?」
「…いいえ。みんな、わたしは大丈夫だから食事を続けて」
マリーが食事を続けてと言うので、みんなは席に戻って食事を続けた。
「あなたたちを…感情が育つ前から閉塞的な場所に縛り付けるという判断をした国際連盟をわたしは一生恨み続けるでしょう」
「マリーどうしたの?わたしたちしあわせよ」
「そうよしあわせよ。だってみんながいるもの。ね?」
わたしたちは笑いあった。みんながいる。それはとてもしあわせなことだ。
マリーは曖昧に笑って今度はアレンの頭を優しく撫でた。
「…今日はすこし遠くに行きましょう。朝食を食べ終わったら」
わたしたちはいつものように食事を終えると、マリーについて歩く。
「箱庭から出なければ、どこへいってもいいわ」
庭は広い。わたしたちは笑い声を上げて方々に散らばった。
若草のむっとするようなにおいのなかに座り込み、わたしは白詰草を摘んだ。
わたしがなにも考えることなく夢中になって摘んでいたことに気づいた時には、ひとつの花輪ができあがっていた。
ジャック。
ふいに、ジャックの笑顔を思い出した。
いつも元気だったジャック。きっと、死んだあともわたしたちを明るく迎えてくれる…。
わたしははっと頬に手を当てた。
涙、涙だ…わたし、泣いている。マリーのように、わたしは涙を流していたのだ。
わたしはそこでジャックのために少し泣いた。
きっと、この庭にいるみんなも、ジャックのた
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