第一章
[2]次話
片方の髭
ハンガリー王マティアスはこの時玉座で首を傾げさせていた、永井金八をなびかせた面長で大柄で逞しい身体の壮年の男だ、黒い目の光も強い。
その彼が家臣達に首を傾げさせつつ語った。
「近頃兵達の金遣いが荒いな」
「はい、確かに」
「騎士達もですね」
「どうも金遣いが荒く」
「それが気になりますな」
「給与以上に金を使っていないか」
王は家臣達にこうも言った。
「あの者達は」
「はい、確かに」
「その可能性はあります」
「あれだけ金遣いが荒いですと」
「そうやも知れませぬな」
「気になるな」
王は今度は考える顔になった、そのうえでの言葉だった。
「これは」
「ではどうされますか」
「兵達に注意をしますか」
「倹約をせよと」
「その様に」
「普通に言っても頷くだけであらためぬ者もいよう」
王は世にはそうした者もいることから述べた。
「だからここはだ」
「いつもの様にですか」
「騎士に化けて」
「そうしてですか」
「左様、兵の中に入りな」
そうしてというのだ。
「そしてだ」
「内情を見て」
「そうしてですか」
「そのうえで、ですか」
「ことを為されますか」
「頭から言うより中から見て」
そうしてというのだ。
「どうすべきか考えてな」
「そのうえでことを為す」
「そうされますな」
「いつも通り」
「そうしますな」
「うむ、そうしよう」
こう言ってだった。
王は王の衣を脱ぎ捨てしがない貧乏騎士の姿になった、そうしてだった。
従者を連れて兵達がいる隊舎に向かいつつ話した。
「この様にすればだ」
「はい、誰も王とは思いませぬな」
「変装もしたしな」
見れば髪型も変えて顔もそうしている。
「これでだ」
「誰も王とは思わず」
「そしてだ」
「内実を見られても」
「それでもだ」
「王に見られているとは思いませぬな」
「左様、玉座にいるだけでなく」
そこから政を見るだけでなくというのだ。
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