第一章
[2]次話
最下位で終わらない
根室寿は自宅で妹の千佳にドヤ顔で言っていた。
「僕の言った通りだろ」
「阪神は終わらないっていうのね」
「まだだ、まだ終わらんよってな」
そのドヤ顔で言うのだった。
「言った通りだっただろ」
「今年は最下位間違いなしって思ってたわ」
妹は兄と一緒にテーブルに座り牛乳を飲みつつ応えた。
「あれだけ負けたから」
「阪神の投手陣ならだよ」
今年のそれならというのだ。
「僕は最下位で終わるなんてな」
「ないって思っていたのね」
「絶対にな」
こう言うのだった。
「確信していたよ」
「それでなのね」
「大逆転で」
それでというのだ。
「最下位を脱出しただろ」
「奇跡ね」
「そしてここからさらに」
目を輝かせてだ、自分も牛乳を飲みつつ話す。
「勝っていって」
「優勝って言うのね」
「ああ、絶対にな」
「それは無理でしょ」
千佳は熱く語る兄にクールな目で応えた。
「流石に」
「ここまで逆転したのにか？」
「ヤクルトのあの強さじゃね」
それならというのだ。
「もうよ」
「無理か」
「優勝はね」
それこそというのだ。
「今で充分驚きだから」
「最下位を出ただけでか」
「そうよ、凄いわよ」
こう兄に言うのだった。
「本当にね」
「僕は当然だと思っているけれどな」
「そんなの想うのお兄ちゃんだけよ」
それこそというのだ。
「本当にね」
「だから言うけれどな」
寿は妹に牛乳を飲みつつ言った。
「今年の阪神の投手陣はな」
「最強だから」
「殆どの試合三点以下に抑えているだろ」
「ええ、確かにね」
数字に出ているので認めるしかないことだった、それで千佳も兄に対してこのことについては素直に認めた。
「先発陣も凄くて」
「伝統の中継ぎ抑えがいてくれてな」
「凄いものね」
「本当に最強だからな」
今年の阪神投手陣はというのだ。
「だからだよ」
「そうそう点取られないから」
「しかも今年は守備もいい」
「エラー少ないわね」
「これまでは守備がよくなかった」
野手陣のそれがというのだ。
「だから好投をしても」
「エラーで失点してね」
「それで負けることもあったけれどな」
「それも少なくなって」
「尚更なんだ」
「守備は万端になったっていうのね」
「巨人を見るんだ」
この忌まわしき邪悪の権化をというのだ。
「打ってもな」
「今あそこ守備悪いからね」
「特に助っ人がな」
「あれはないわね」
その守備の悪さはというのだ。
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