可能性
[6/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
「君は、ムーンキャンサー……あの化け物を探すために生まれたと言っていたな」
「ああ。俺は怪獣だ……ムーンキャンサーを探すために生まれたんだ」
「ああ。だが、それを行うのは君自身でしかない」
すでにアナザーアギトの目には、もう光はない。
「例え君がどんな境遇であろうとも……どんな出自であろうとも……それを決めるのは、君自身だ。可能性を狭めるのも、広めるのも……全て……自分自身だ」
アナザーアギトがそこまで言ったところで、彼の口から血が吐き出された。
緑のボディを赤く染め上げていくそれに、アンチは思わず顔を伏せる。
アナザーアギトの胸を貫通する、トレギアの腕。だが、それでもアナザーアギトは言葉を紡ぐのを止めない。
「だから……君は……自分の意思で……生き___
それ以上の声を、アンチは聞き取れなかった。
アナザーアギトの体が、緑の粒子となって消えていく。
「あっ……」
アンチは思わず、アナザーアギトへ手を伸ばした。だが、アナザーアギトに手が届くよりも先に、バッタを思わせる異形の形は消失していった。
「おいおい……何を言っていたんだか……」
トレギアは、アナザーアギトを貫いた腕を振った。
やがてトレギアは、改めてアンチを睨んだ。
「さあ……次は君だ。人と触れ合いすぎた怪獣には禄なことがないと相場が決まっているからね」
トレギアの赤い眼が光り、光線が放たれる。
アンチは両腕で顔を守りながら、その身を転がし、赤い光線から逃げる。急いで起き上がり、トレギアの次の動きに備えようとするが、アンチの目の前にあるのは虚空だけ。
「おや。誰を探しているのかな?」
突如として、顎を撫でられる感触。
「しまっ……!」
振り向いたがもう遅い。
背後のトレギアの爪より発せられた赤い刃が、至近距離でアンチの体を切り裂いた。
「ぐああああああああああああああああああああああああああっ!」
とくに、アンチの右目。瞼の上から強烈に与えられた痛みに、アンチは悲鳴を上げた。
そのまま崩れたアンチへ、トレギアが手心を加えるはずもない。
「終わりだ。トレラアルティガイザー」
トレギアの両手に、蒼い雷が閃く。
この状態で、それを食らえば命はない。
アンチは急いで立ち上がり、慌てて逃げ出す。
「くそおおおおおおっ!」
アンチが自らに発破をかけた。
怪獣としての身体能力は、たとえ重傷を負っていようと、人智を越えた運動性能を保証する。三画跳びの要領で壁を伝い、建物の上へ上昇。そのままアンチは、一目散に見滝原南の地を離れていった。
「ふうん……まあいいか」
トレギアは自らの仮面に手を取る。
外す
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ