可能性
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「うん。平気。それよりアンチ君のムーンキャンサー探しを続けよう。相変わらず何を探しているのかさっぱり見当つかないけど」
「探すのは私が引き受けましょう」
薫が手を上げて制した。
「え……いいんですか?」
「ええ。君たちはこの地の者ではない。これ以上、この地で苦労を負うことはないでしょう」
「でも……」
「仮に今日見つからなかったとしても、五時ごろにはこの少年を家に帰しましょう。……参加者でもあり、見滝原の人間でもある君たちがここにいてはならない」
「ハルトさん」
それでもと言い張ろうとするハルトの袖を、響が引っ張った。
「大丈夫だよ。お医者さんを信用しよう?」
「信用していないわけじゃないよ。ただ……アンチ君だけじゃなくて、蒼井晶のこともあるし……」
「わたしも蒼井晶……ちゃん? のことは心配だけど、少なくとも狂三ちゃんは、今は戦うつもりはないんだし……色々立て直した後、またあらためて来ようよ」
「……分かった」
渋々ながら。
マシンウィンガーに跨ったハルトは、響を乗せて、ハイウェイに乗り込み、見滝原本土に戻っていった。
ムーンキャンサー。
薫がゆっくりとその後に続いてくる気配を感じながら、アンチは見滝原南のあちこちを探し回っていた。
ゴミ箱を漁り、廃墟の中を巡り。
ハルトたちと約束した夕方近くになっても、ムーンキャンサーは見つからなかった。
「そろそろ時間だ」
サングラスを外さないままの薫が告げた。
「この辺りで切り上げようか」
「だが……俺はムーンキャンサーを探すために生まれた。見つけないと……」
「むう……」
アンチの言葉に、薫は喉を唸らせた。
その時。
「やあ。アンチ君」
その声に、アンチと薫は動きを止めた。
振り向けば、そこには___道化がいた。
左右を白と黒に分かれた服を着用し、髪には蒼いメッシュが走っている。にやりと笑みを顔に張りつけた彼は、右手に風船を持ちながらアンチへ手を振っていた。
「知り合いか?」
「……お前は……」
「おや? 忘れちゃったのかい? 私だよ、霧崎だ」
霧崎と名乗った彼は、胸に手を当てながら屈みこんだ。
アンチは彼を見て、反射的に薫の背後に隠れる。それを見た薫は、静かに尋ねる。
「保護者という訳ではなさそうだが……?」
「ひどいなあ……私はれっきとした、その子の保護者ですよ?」
霧崎はにやにやと笑みを絶やさない。風船を持った手を放し、彼が持っていた赤い風船が飛んで行く。その中で、彼は懐から蒼い棒状のものを取り出した。
彼はその端に仕組まれているスイッチを押した。
すると、棒状のそれは左右に展開される。中心にほどこされていた金
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