霊峰編 決戦巨龍大渓谷リュドラキア 其の終
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めていた。
爽やかな涼風に頬を緩め、凛とした眼差しで海の彼方を見遣るその麗しさは、どこかの王城の肖像画から飛び出して来たかのようである。
「遠い地に居る友人を想うような眼……だな。ユベルブ公国の方角を見ていたようだったが」
そんな彼女の背に声を掛ける壮年の騎士は、女騎士が見つめていた方角とその表情から、胸中を看破していた。だが、彼の部下である女騎士は首を小さく左右に振り、苦笑を浮かべている。
「……友人と呼べるほどの深い仲ではありません。あまりに愚直で、無謀で、真っ直ぐで……とても放っては置けない。そのような騎士が、この海の向こうに居たのです」
「そうか……。ユベルブ公国は規模こそ小さいが、気高く凛々しい民に溢れた精強な国家だからな。彼の国の近辺に居る騎士ならばむしろ、それが普通なのかも知れん」
港町としての側面も持つこの地で、王国騎士達を率いている壮年の騎士――ガレアス。彼はその長い人生の中で、ユベルブ公国の風土についても熟知しているようであった。
そんな彼の横顔を一瞥する女騎士――フィオレーネは。未熟な姫騎士の気高い眼差しを思い起こし、微笑を浮かべている。
「……えぇ。あの真っ直ぐさはきっと、彼女に限った話ではないのでしょう」
次に会った時は、どんな剣士に成長しているのだろう。どれほど腕を上げているのだろう。そんな淡い期待が、その貌に顕れていた。
「さて……それでは、今日も訓練を始めるとしようか。準備は良いな? ミーナ」
「は〜いっ! よろしくお願いします、フィオレーネ教官っ!」
やがて踵を返した女騎士は、新たな「教え子」に厳しい眼差しを向ける。そのプレッシャーをものともせず、ナルガシリーズ一式の防具を纏う1人の美少女は、溌剌とした声を上げていた。
――ミーナ・クリード、本名ヴィルヘルミナ・クラウディス。「伝説世代」の中でも最強格と噂されている、ディノ・クリードことグランディーノ・クラウディスの実妹である。
ユベルブ公国に代々仕えている武家の名門・クラウディス家。その長兄であるグランディーノの背を追うように、修行の旅に出ていた彼女は今――フィオレーネの弟子として、このエルガドに身を置いているのだ。
上位ハンターに相当する実力を証明出来なければ、婚姻に自らの意思を反映させることが出来ない……という切実な家の事情故に、彼女はフィオレーネの元で高みを目指しているのである。その小さな背に装備しているヒドゥガーIも、彼女自身のひたむきな努力によって練り上げられて来た逸品なのだ。
「よし……では、今日も私と共に飛竜種の討伐に赴くとしよう。言っておくが、あの『伝説世代最強の武人』の妹だからといって遠慮するつもりは毛頭ない。覚悟しておくのだな」
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