霊峰編 決戦巨龍大渓谷リュドラキア 其の二
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の異父妹であった。ドロスシリーズとメデュレトシリーズの混合装備を纏っている彼女は、生家を飛び出しハンターになった兄を追うために、その道を選んでいたのである。
――2人の母は高貴な身分の美少女だったのだが、とある身分の低い男と恋に落ち、実家を飛び出したことがあった。しかしその恋人は、モンスターに襲われ帰らぬ人となってしまったのである。
その後、彼女はアルグリーズ家に連れ戻され、本来の婚約者と改めて結ばれることになったのだが――その時すでに、彼女はカノンを身籠っていたのだ。それから数年後にはクゥオが産まれたのだが、2人が兄妹と認められることは終ぞなかった。
身分の低い男の血を引いていたカノンは激しく冷遇され、アルグリーズ家の嫡子として認められたのはクゥオ独りだった。だが、クゥオ自身にとってのカノンは、たった1人の大切な兄だったのである。
それでもカノンは――自分さえ居なくなれば、くたばってしまえばとアルグリーズ家を去ってしまった。「目障りな小僧が自分から消えてくれた」と喜ぶ当主は、愛娘から軽蔑の目で睨まれていたことにも気付かなかった。
そして、数年後。ついにはクゥオまでもがアルグリーズ家の制止を振り切り、敬愛する兄を探す旅に出てしまったのである。それは奇しくも、身分の低い男と駆け落ちした母の背を想起させるような旅立ちであった。
だが、今のクゥオは実家に戻るしかなかった母とは違う。アルグリーズ家が力尽くで連れ戻せるようなか弱い女ではない。クサンテやロエーチェらと共に上位昇格を目指している、一端のハンターなのだ。
(テリル姉のような、悲しい犠牲なんて……もう絶対に繰り返させないッ! 絶対上位に昇格して、ビオ兄に追い付くんだッ! テリル姉の分までッ!)
(カノン兄様に会うまで、私は絶対に負けられないッ……! アルグリーズ家がなんと言おうと、カノン兄様は私の最愛の人! あの人に会いたいと願う私の想いだけは、誰にも邪魔させないッ!)
ロエーチェとクゥオ。彼女達はそれぞれの胸に、命を懸けるに値する信念を刻み込んでいた。
戦う理由は違えど、向かう先は同じ。きっと、この戦いに参加している全員がそうなのだと信じて、彼女達は大砲を撃ち続けていた。
――だが、そんな彼女達の奮戦を嘲笑うかのように。老山龍は、大地を揺るがし侵攻を続けている。
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