霊峰編 決戦巨龍大渓谷リュドラキア 其の一
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女は、全身を襲う痛みすら振り切るように、家臣のディフェンダーに手を伸ばしていた。
――6年前、カムラの里を百竜夜行の脅威から救ったという「伝説世代」のハンター達ならば、かの巨龍さえも容易く退けてしまうのだろう。だが、今ここにいるのは彼らではない。
この渓谷に駆け付けて来たハンター達しか。その1人であるクサンテ・ユベルブしか。眼前に聳え立つ老山龍を迎え撃つことは出来ないのだ。
「……奴を倒したら、必ずあなたを迎えに行く! 少しだけ待っててね、デンホルムッ!」
家臣の献身に報いるためにも、その責務は必ず完遂せねばならない。その決意に己を奮い立たせた気高き姫騎士は、身の丈を越える大剣を気力だけで担ぎ上げると、応急薬を飲み干しながら走り出して行く。
(デンホルムの言う通り……私は、ここで立ち止まっているわけにはいかない! 私達は前に進んで、強くならなくちゃいけないんだからッ! あのお方……気高く美しき、フィオレーネ様のようにッ!)
そんな彼女の脳裏に過っていたのは――数ヶ月前、岩竜「バサルモス」との戦いで窮地に陥ったクサンテとデンホルムを颯爽と救った、怜悧な女騎士の姿だった。
「フィオレーネ」と名乗るその片手剣使いは、同性のクサンテも思わず見惚れてしまうほどの剣技を振るい、バサルモスを鮮やかに討伐して見せたのである。そんな彼女の凛々しく気高い背中を思い出し、クサンテは己を奮い立たせようとしていた。
目標とする女騎士が魅せた「強さ」を求め、雄大な老山龍の背に追い縋るその勇姿に、幼い頃から成長を見守ってきた壮年の騎士は力強い微笑を浮かべていた。
「姫様……どうか、ご武運をッ……!」
◇
――荒唐無稽なほどに凄まじい逸話を大陸各地に残してきた、「伝説世代」。その再来を予感させる次世代の天才狩人達は、世界的にも稀少な素材の名を取り「宝玉世代」と呼ばれていた。
これは、その宝玉の如き原石達の在りし日を描いた、英雄譚の序章でもあるのだ――。
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