霊峰編 決戦巨龍大渓谷リュドラキア 其の一
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いは止まらず、彼はそのままクサンテもろとも岩肌に叩き付けられてしまう。
あまりの衝撃に、岩肌には亀裂が走っていた。当然デンホルムが受けたダメージも尋常ではなく、砕け散ったアロイシリーズと運命を共にするかのように、彼はその場に倒れ込んでしまった。
「そんなッ……! デンホルムッ! デンホルム、しっかりしてッ!」
「……ひ、姫様、よくぞご無事で……」
「喋らないで! 今応急薬を……ッ!?」
彼に救われたクサンテでさえも、この衝撃で数本の骨が折れているのだが。彼女は己の痛みよりもデンホルムの重傷に目を向け、応急薬を取り出そうとする。
だが、巨漢の騎士は応急薬を握る姫騎士の手を取り、言外にそれを制止していた。これほどの深傷を負っているのに何故、とクサンテは目を剥く。
「それは……ご自身にお使いください、姫様。あなた様も決して軽い傷ではないのですから」
「で、でもあなたの方がかなりの重傷だわ! 骨だって一体何本折れてるか……!」
自分の未熟な立ち回りのせいで、家臣の騎士をこれほど傷付けてしまった。そんな後悔に頬を濡らしている彼女の後ろでは、老山龍が平然と歩みを進めている。
クサンテ達のことなど、まるで眼中にないかのように。
「……姫様、あの老山龍を討つべく立ち上がったハンターは私達だけではないのです。2人の攻撃が通じずとも、諦めることはありません……!」
「デンホルム……」
「坊っちゃまの無念を晴らしたい……その志は私も同じです。だからこそ、姫様には生き延びて頂かねばならぬのですッ! いつの日か必ず、あの大猪との決着を果たすためにもッ……姫様だけはッ!」
それほどの圧倒的な「脅威」を仰ぎながらも、デンホルムは絶望することなく。力強い眼差しで、ラオシャンロンが進む先に待ち構えている無数の砲台を見遣っていた。
遥か昔から、老山龍が徘徊するルートの一つとして認知されているこのリュドラキアには、大砲をはじめとする多くの狩猟設備が用意されている。すでにデンホルムの視線の先では、他のハンター達が砲撃の準備を整えていたのだ。
「きゃあぁっ……!?」
やがてその砲口が激しい火を噴き、老山龍の全身に砲弾が着弾していく。クサンテの悲鳴を掻き消し、ラオシャンロンの巨躯すら揺るがすその爆炎と轟音こそが、「開戦」の狼煙であった。
「今の砲撃……まさか、他のハンター達が……!?」
「それぞれ戦う理由は違えど、上位昇格という目的は同じ……! ならば彼らも必ずや、姫様の力となって下さるはず! 私に構うことなくお進みください、姫様! 坊っちゃまの御霊のためにも、姫様ご自身のためにもッ!」
「……ッ!」
決して譲らぬデンホルムの強い言葉に、クサンテは桜色の唇を噛み締める。折れたオーダーレイピアを手放した彼
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