霊峰編 決戦巨龍大渓谷リュドラキア 其の一
[2/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
主ならば、決して引き受けようとはしない条件だろう。
だが。上位への昇格を目前に控えていた狩人達は、より高みへと近づくため――巨大な古龍が相手になるのだと知りながら、その条件を受け入れていたのだ。
かつての「伝説世代」がそうであったように。この事件に挑むことになった彼らもまた、下位の枠には到底収まらないほどにまで頭角を表していた、「逸材」の集まりだったのである。
ドンドルマから試験を受けに来ていた彼らの中で、誰よりも速く現場に到着し。誰よりも速く巨大龍と対峙していた、当時のクサンテ・ユベルブとデンホルム・ファルガムも、その1人であった。
「ハァ、ハァッ……そ、そんなッ……! わ、私達の攻撃がまるで通じていないなんてッ! これが『老山龍』の……『古龍』の力だというのッ!?」
遥か古の時代から幾度となく観測されてきた、全長およそ70mという霊峰の如き巨躯を持つ古龍――「老山龍」ラオシャンロン。
その天を衝くほどの絶大な巨体を仰ぐクサンテは艶やかな金髪を振り乱し、激しく息を荒げていた。老山龍の強靭な外殻に挑み続けたオーダーレイピアはすでに刃毀れを起こしており、アロイシリーズの防具は巨龍の足踏みによって噴き上がる土埃に塗れている。
その鎧の下に隠された白く豊穣な肉体も、体力の消耗と精神の焦燥に伴い、しとどに汗ばんでいた。防具の隙間からは男の情欲を掻き立てる甘い汗の匂いが漂っているのだが、今はその芳香全てが戦場を吹き抜ける土埃に掻き消されている。
「危険です姫様、お下がりくださいッ! 奴はただ移動するだけでも強大な『余波』を……ぬぉおッ!」
その土埃を撒き散らす足踏みから彼女を守ろうと、庇い立つように大剣を構えて防御姿勢を取っているデンホルムも。老山龍がただ歩くだけで響き渡る激震に足を取られ、体勢を乱していた。
彼の身を固めているアロイシリーズの防具も、老山龍の移動によって発生した落石により深く傷付いている。双剣での攻撃に徹しているクサンテを庇い続けてきた彼のダメージは、すでに深刻なものとなっているのだ。
自分達の装備だけでは、老山龍の撃退は難しい。己の力量を正確に把握している他の下位ハンター達はその判断に基づき、砦に常設されている大砲の準備に取り掛かっているのだが――クサンテだけは昇格への焦りから、設備にも頼らずラオシャンロンに突撃してしまったのである。
そんな彼女を放って置くわけにも行かず、デンホルムも大砲の準備を他のハンター達に託し、クサンテの援護に奔走しているのだが。たった2人の下位ハンターが援護射撃も無しに打ち勝てるほど、古龍という存在は甘いものではない。
他のハンター達が危惧した通り。クサンテとデンホルムは、ただ移動している
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ