霊峰編 決戦巨龍大渓谷リュドラキア 其の一
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――遠い昔。自然と共に生きる人々の歴史の中で。モンスター、と呼ばれる巨大な生物との命のやり取りを繰り返す、ハンターという者達がいた。
ありとあらゆる武器を操り、人智を超越する存在と戦い続けてきた彼らは、己が狩ったモンスターの素材を元に、さらなる強さを手にしてきた。
彼らはその強さを以て、より強いモンスターに挑んで行く。その繰り返しは、やがて大きな歴史の渦となって行くのだった。
これもまた、その歴史の片隅に埋もれたほんの小さな物語の一つなのである。
◇
ユベルブ公国の国境線付近に存在する大渓谷「リュドラキア」。その最奥に設けられた「砦」は公国が誕生する以前の時代から、地を揺るがす天災に立ち向かうための牙城としての務めを果たしてきた。
そんな歴史ある狩猟の聖地は今――この時代のハンター達の「昇格」を巡る、登竜門となっていた。遥かな高みを目指す新世代の若者達は各々の武器を携え、矢継ぎ早に拠点から飛び出している。
数時間前、突如この渓谷に出現した「巨龍」に対抗するため、上位への昇格試験を受けている最中だった下位ハンター達が緊急招集されているのだ。
過去の記録よりも遥かに速い進行速度で、渓谷の中を移動している「巨龍」。その異変の原因を突き止める前にこの侵攻を阻止せねば、国境線付近の人里に甚大な被害が発生してしまう。
本来ならばこうした事態には、上位やG級の熟練ハンター達が対処に向かうものなのだが。彼らが不在であることには、「やむを得ない事情」があった。
彼らは今、世界の存亡を賭けた一大決戦に赴いているのだ。
――旧シュレイド王国を滅ぼしたとされる、「伝説の黒龍」ミラボレアス。その出現の予兆を観測したハンターズギルドは、国家や地域、大陸などの全ての垣根を越え、この災厄に立ち向かうための戦力を結集させていた。
天賦の才と確かな経験値を併せ持つ、29人の狩人達――「伝説世代」もその主戦力の一角として、黒龍との決戦に臨もうとしているのだ。
彼らをはじめとするG級や上位相当のハンター達が不在である今、巨龍の侵攻に対抗出来るのは「近場」に居た下位ハンター達しかいない。
それに等級こそ下位扱いではあるものの、すでに上位ハンターにも引けを取らない練度に達している彼らならば、この状況にも対処出来るはず。
それが、今回の緊急事態に対するハンターズギルドの決断であった。
ギルドは昇格試験の中止と引き換えに、この依頼の完遂を新たな上位認定の条件としたのである。
歴戦のハンターでさえ容易く命を落とすこともある、巨大龍との攻防。その激戦の行方を下位ハンター達に委ねるなど前代未聞であり、真っ当な神経の持ち
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