怪鳥の脅威
[4/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ハルトの前に、別の人影が割り込んできた。
怪鳥の勢いを活かしたまま、投げ飛ばす。
グエッと怪鳥に悲鳴を上げさせたその人物は。
「……さっきの医者?」
昨夜からさきほどまでにかけて世話になった、あの医者である。
サングラスを着けたままの彼は、静かに怪鳥を見つめる。そして、倒れたままのアンチや耳を抑える響を見渡した。
そして、ウィザーソードガンが霧散させた、怪鳥の光線跡……光線によって切り裂かれた瓦礫を見下ろした。
「なるほど……」
怪鳥が光線で切断した瓦礫を撫でながら、医者はサングラスを外した。
「ものの見事に切断されている。まるで超音波メスのようだ」
「超音波メス……? つまり、音ってこと……?」
ならば、響が極端に怪鳥と相性が悪いのは、彼女の歌のエネルギーが乱されたということだろうか、とハルトは推測した。
「医療用の技術としても活用されているが、こんな攻撃を行える生物がいるとは驚いた」
分析を終えた医者はそれだけで怪鳥へ視線を戻す。
「危ないですよ……! ここにいたら……!」
「問題ありませんよ。もとより、私はこの手で人々を守るために生かされているのですから」
医者はそう言って、自らの右腕を撫でる。
何かを語りかけるかのように、右腕を数回叩いた後。
両腕を組み、腰に下ろす。
すると彼の腰に、銀色のベルトが生えてくる。バックル部分が緑色の宝石となっているそれは、体内からの生成物ということもあって、より一層の生々しい印象を与えた。
そして。
「……変身」
静かに告げられる、医者の一言。同時に、右腕を前に突き出していく彼の体。
すると、彼の体に変化が訪れる。
肉体が変化していく音とともに、その体が緑の体色となる。
「え」
その姿に、ウィザードと響は言葉を失う。
バッタにも見える、その異形。
屈強な腕と足、その肩甲骨のあたりから風になびくオレンジ色のマフラー。
その、人間がその体を変質できる者。ハルトがそれまで見知った人物の中で、それができる者の共通する特徴は少ない。
「参加者……なのか?」
「いいえ。彼は処刑人ですわ」
ハルトの言葉に、ずっと姿勢を変えない狂三が応えた。
「処刑人が……何で?」
「彼はもともと生にも執着していないようですわ。最初から聖杯戦争の刺客として動くつもりはなく、この地で闇医者として動いている……医師免許もなさそうなのに、人を救うことに尽力するなんて、物好きな処刑人もいたものですわ」
「そんな処刑人がいたのか……」
「彼の名は木野薫。またの名を……」
医者だったバッタの異形は、「すぅ……」と息を吸い込む。そのまま、構えを動かした
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ